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夜、どうにもならない他人の君と。(正門) ページ24

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良規くんはお姉ちゃんの恋人だった。



過去形なのは、さっきリビングで、赤い目をしたお姉ちゃんが良規くんと別れたって、お母さんに報告しているのを聞いたから。
お姉ちゃんが話す仕事とか結婚とか、学生の私にはどれも漠然としかイメージできなかったけれど、何となく分かったのは、お姉ちゃんは未来のために良規くんとお別れした、ということ。
お母さんがお姉ちゃんの背中をさすってあげているのを尻目に、私はテレビを消してそっとリビングを出た。
もうすぐ良規くんの出ている番組が始まる時間だった。



自分の部屋でボリュームを絞ったテレビを見ていたら、電話の着信音が鳴った。
ラインのじゃなくて、ほんとの電話のやつ。
画面に並ぶ漢字四文字を、今見るのは心がザワザワした。私はテレビを消して、ほんの少しの罪悪感と一緒にベッドに潜り込み、通話マークを押した。



「もしもし」



定型の言葉を言うだけなのに、喉がひくついた。
とっさに愛想の良い声が出せない自分に落ち込む。



『もしもし、Aちゃん?』



酸素の薄い布団の中が、良規くんの声で満たされる。
夜と、電話と、良規くんって、相性抜群の組み合わせだと思う。全部が毒みたいに全身によくまわる。



『今もう、おうち?』



おうちだって。
お姉ちゃんと付き合ってからの良規くんは、私のことを年の離れた妹みたいに可愛がる。多分お姉ちゃんが私にするのが、移ってしまったんだろう。
今はまだ21時を過ぎたところだった。



「ううん。今から帰るとこ」



誰にも見られていない所で、一人で吐く嘘は簡単だ。
声だけで本当のことを伝える方がよっぽど難しい。



『そっか。ちょっと話したいことあるんやけど、帰る前にどっかで会われへんかな?』


「いけるよ。良規くんは家?」


『うん。Aちゃん、どこおるん?』


「今梅田の方におるから、帰り道やし家寄ろっか?」



良規くんはすぐには返事しなかった。
ついこの間も、仕事が忙しいお姉ちゃんの使いっ走りで良規くんの家に寄ったけど、その時は平気であげてくれたのに。
お姉ちゃんと別れたせいで、私を何者として扱えばいいのか分からなくなっているんだ。
そう思うと、無性に泣きたくなった。



「良規くん?」


『あ、ごめんごめん。ほな来てもらおかな』


「はーい」


『気を付けておいでなぁ』


「うん、また着く頃にラインする」



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黒雷憂無(プロフ) - コメント失礼します。神様のねがいごとの長編見てみたいです! (3月10日 1時) (レス) id: 3082381280 (このIDを非表示/違反報告)
三十谷みそ(プロフ) - シキさん» シキさん、コメントありがとうございます!うわ〜嬉しい!ぜひ長編をお待ちくださいませ! (2022年12月7日 22時) (レス) id: 0083c24134 (このIDを非表示/違反報告)
シキ(プロフ) - コメント失礼します!神様のねがいごと、めちゃくちゃ続き気になります!よければ長編楽しみにしてます♡ (2022年12月7日 3時) (レス) @page39 id: fa47139e50 (このIDを非表示/違反報告)
三十谷みそ(プロフ) - yuksaさん» yuksaさん、コメントありがとうございます!読みたいと言ってもらえると書きたくなりますね(笑)嬉しいです。続きアップできるようにがんばります。 (2022年12月3日 0時) (レス) id: 0083c24134 (このIDを非表示/違反報告)
yuksa(プロフ) - はじめまして。神様のねがいごとの続き、すごい読みたいです。面白かった! (2022年12月3日 0時) (レス) id: 1137319ed0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:三十谷みそ | 作成日時:2022年4月6日 23時

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