・ ページ13
3/5
「こころください。塩で」
「まだ食べるんですか？」
「ん、美味しいんで」
「あはは、ありがとうございます」
お皿とおちょこが五つずつ空になった頃には、今村さんの記憶はどっかにいって、次の注文を何にしようかしか頭になかった。
美味しいものの力は偉大だ。
さっきホールの子を帰らせたから、今は店員はお兄さん一人。お酒を飲み比べにしてくれた時から、ん？とは思っていたけど、お兄さん店長だったのか。
「すごいですね」
「ん〜？」
「私と同い年やのに、お店切り盛りしてるのかっこいいです」
「そんなん言われたら照れるわぁ」
ちょくちょく敬語がゆるむのも、なんか良い。天然で人心掌握できるタイプなんだろうな。
「そういえば終電大丈夫です？」
そう言って後ろを向いたお兄さんの目線に従って壁の時計を見たら、時刻はとっくに11時半を過ぎていた。やばい、かも。
「こっから駅ってどんくらいで…」
「駅の前まで10分くらいかな」
「やっばい！」
「何分？」
「52分が最終なんです！」
「あらら」
席を立ちバタバタと財布を取り出す私に反して、お兄さんはゆるいリアクションだ。
「提案なんですけど」
「はい！」
「今から走っても最悪間に合わへんし、ちよっと遅なってもよかったら車で帰りません？」
「くるま？」
「うん、俺の」
とにかく走れ！と指令を出していた脳みそが、突然舞い込んだありがたいお誘いに急停止する。けど、迷っている暇もない。
「どうします？」
「えーとー」
「楽な方で」
「あー……お願いしてもいいですか？」
「喜んで！」
お兄さんはニカっと笑って、お腹は満足してます？と聞いてくれた。良い人すぎて、なんかもう、お腹というより胸がいっぱいなんですが。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 448人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
黒雷憂無(プロフ) - コメント失礼します。神様のねがいごとの長編見てみたいです！ (3月10日 1時) (
レス) id: 3082381280 (このIDを非表示/違反報告)
三十谷みそ(プロフ) - シキさん» シキさん、コメントありがとうございます！うわ〜嬉しい！ぜひ長編をお待ちくださいませ！ (2022年12月7日 22時) (レス) id: 0083c24134 (このIDを非表示/違反報告)
シキ(プロフ) - コメント失礼します！神様のねがいごと、めちゃくちゃ続き気になります！よければ長編楽しみにしてます♡ (2022年12月7日 3時) (レス) @page39 id: fa47139e50 (このIDを非表示/違反報告)
三十谷みそ(プロフ) - yuksaさん» yuksaさん、コメントありがとうございます！読みたいと言ってもらえると書きたくなりますね(笑)嬉しいです。続きアップできるようにがんばります。 (2022年12月3日 0時) (レス) id: 0083c24134 (このIDを非表示/違反報告)
yuksa(プロフ) - はじめまして。神様のねがいごとの続き、すごい読みたいです。面白かった！ (2022年12月3日 0時) (レス) id: 1137319ed0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：三十谷みそ | 作成日時：2022年4月6日 23時
