焦ってちぎって(西畑) ページ22
1/2 (彼女)
※ヘキな描写があるので、気持ち悪いと思ったら読むのをやめてください。
私の彼氏は普通じゃないのかもしれない。
けど、
それに気付いた頃には、私も普通じゃなかった。
「A」
「左？」
「うん」
私の腕を掴む掌の温かさ、唇の柔らかさ、
「ん……っ、つぅ」
そんなものを一瞬で忘れさせる、痛み。
大吾くん。
声が震えたら心配されるから。
名前を呼ぶかわりに、空いた右手で大吾くんの髪の毛に触れた。ふわふわ。この感触が麻酔がわりだ。
大吾くんには噛み癖がある。
初めて噛まれたのは、ソファに並んで映画を見ている時だった。そういう"癖(へき)"な行動って、ベッドの上の延長線上にあるものだと思っていたから、はじめ何が起こったか分からなかった。
ただ、二の腕にくっきり残った歯形と、大吾くんの満足そうな笑顔を見て、次もあるだろうなぁ、と思った。
「んあ」
大吾くんの口の端から唾液が垂れる。
私の二の腕の表面はじっとりと湿っている。
そうなる頃には痛覚も鈍くなっていて、大吾くんの犬歯が肌に沈む瞬間に、少しの気持ち良ささえ感じられた。
しばらく同じ所を噛み続けた後、大吾くんはゆっくりと顔をあげた。興奮して潤んだ瞳が弧を描いている。
「ありがとぉ」
「どぉいたしまして」
「痛ない？」
「大丈夫やで」
「今日いつもとちゃう匂いする」
「え、匂いとか嫌や」
「いい匂いやで。いつもより甘め」
「んー、今日行ったお店の匂いかなぁ。バニラかなんかのアロマ置いててん」
「そっち系やわ」
バニラとか美味しそうでええやん、と笑いながら大吾くんは私の頬にキスをした。ふんわり軽いそのキスは、まるで子ども同士のキスみたいで、さっきまでの湿度と釣り合わない。
大吾くんがテーブルの上のウェットティッシュをシュッシュと取り出して、二の腕に染み込んだ唾液を拭きとるまでが一連の流れで、私はやさしく撫ぜられている自分の腕を、どこか遠くから眺める。
赤くなった所、黄色くなった所。
ティッシュの上に絵具の水滴を落としたみたいに、にじんだ痣が広がっている。
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黒雷憂無(プロフ) - コメント失礼します。神様のねがいごとの長編見てみたいです！ (3月10日 1時) (
レス) id: 3082381280 (このIDを非表示/違反報告)
三十谷みそ(プロフ) - シキさん» シキさん、コメントありがとうございます！うわ〜嬉しい！ぜひ長編をお待ちくださいませ！ (2022年12月7日 22時) (レス) id: 0083c24134 (このIDを非表示/違反報告)
シキ(プロフ) - コメント失礼します！神様のねがいごと、めちゃくちゃ続き気になります！よければ長編楽しみにしてます♡ (2022年12月7日 3時) (レス) @page39 id: fa47139e50 (このIDを非表示/違反報告)
三十谷みそ(プロフ) - yuksaさん» yuksaさん、コメントありがとうございます！読みたいと言ってもらえると書きたくなりますね(笑)嬉しいです。続きアップできるようにがんばります。 (2022年12月3日 0時) (レス) id: 0083c24134 (このIDを非表示/違反報告)
yuksa(プロフ) - はじめまして。神様のねがいごとの続き、すごい読みたいです。面白かった！ (2022年12月3日 0時) (レス) id: 1137319ed0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：三十谷みそ | 作成日時：2022年4月6日 23時
