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ゾ「なぁお前…」
「あっ！もうこんな時間…姉さんに怒られてしまいんす…じゃあ、また！」
私は、そのまま走り出した。
卵も買えず、こんな時間まで外をほっつき歩いていたなんて聞いたら、姉さんは怒り狂うだろう。
一刻も早く帰らねば…。
ゾ「おい！お前、名前は？」
路地を出る時、不意に呼び止められた。
名前…か。
遊郭内で、“昔の名”は名乗ってはいけない。
「…わっちは、曙楼の蛍でございんす！よろしくお願いしんす。」
私は振り返って、笑みを見せた。
その笑みは、客に向ける外行の笑顔。
私を、人として扱ってくれた、海外の武士様。
きっと、一生忘れない。
本当は、ちゃんと本名で挨拶をしたいところだけど…
もしその名を口にしてしまったら、覚悟が鈍る気がして。
…ここでずっと生きていく、覚悟。
決めたばかりだから。
昔の名は捨てる。
そうして、私は生きていくんだ。
「…姉さん！」
花「蛍！どこほっつき歩いてたんだい！」
「ごめんなんし…卵を途中で落としてしまいんした…。」
曙楼に帰ると、姉さんには案の定こっぴどく怒られた。
卵落とした上に、小一時間も帰ってこなかったんだ。
心配かけて、怒られて、でもそのあともう一度2人で卵を買いに行った。
今日の人…
方向音痴みたいだったけど、しっかり帰れたのかしら、なんて思いながら。
花「…もうすぐ桜が咲くねぇ」
「そうね、姉さん。」
花「桜が咲く頃には、蛍も新造かえ」
幼い頃、遊郭に入ってきて…
ずっと姉さんの横で、育ててもらってきた。
そっか…
もうすぐ私は、禿から新造になる。
新造になれば、姉さんが手があかない時は、私がお客の相手をすることも出来るんだ。
やっと、少しだけ姉さんのような立派な遊女に近づけるのね。
「姉さんは…もうすぐ年期明けね」
花「あぁ、蛍が客を取れるようになる頃には、もうわっちはいないでありんしょうねぇ」
遊女は、28歳になると年期明けになる。
年期明けというのは、もう働かなくてよくなる、ってこと。
自由の身だ。
でも…
10年間客の相手をした遊女が、綺麗な身で外の世界に出ることは出来ない。
「…何事もないといいでありんすね」
大体の遊女は、梅毒などの病気にかかり、長い命ではないのだ。
でも姉さんは、奇跡的に病気など持っていない。
どうかこのまま…無事に年期明けを迎えられますように。
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おはよ - 面白いです！更新してくれると嬉しいです (2023年3月23日 9時) (
レス) @page6 id: d4f6705fb9 (このIDを非表示/違反報告)
ゆずの(プロフ) - 和恋さん» 和恋さん初コメありがとうございます(^^)これからも更新頑張りますので、どうぞよろしくお願いします！ (2021年8月31日 18時) (レス) id: b4c9c386da (このIDを非表示/違反報告)
和恋(プロフ) - めっちゃ好きです！更新待ってます！ (2021年8月26日 21時) (レス) id: 736c16840a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：チバ | 作成日時：2021年8月25日 16時
