【忍たま】君と紡ぐ物語

潮江文次郎-10 ページ23

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二人を残して、善法寺伊作はそっと医務室を後にする。
廊下には潮江文次郎と同じクラスの立花仙蔵が腕を組んで柱にもたれかかっていた。


仙蔵「文次郎の具合は？」

伊作「大丈夫だよ。大人しく寝ていれば数日で治る。それにしても、文次郎があんな怪我をして帰ってくるなんて珍しいね。何かあったのかい？」

仙蔵「まぁ、な。あいつの後輩思いにも困ったものだ…」


肩を竦め、両手を上げる仙蔵は困ったように眉を下げる。
仙蔵が言うには、今回の任務はとある城の姫様の警護だったという。
もうすぐ任務も終わる、と思った矢先の出来事だった。一瞬の隙を付かれ、姫様に敵が襲いかかってきたのだ。
しかし大した人数でもなければ手練という訳でもなかったので、仙蔵と文次郎の二人で護れる…ハズだった。
姫様の前に出ようとした時、自分達よりも先に姫様を庇ったのは城の女中の子供。
しかもそれが…Aにそっくりの女子だったと仙蔵は言う。
手に持っていた苦無や手裏剣を投げれば良かったものを、文次郎は何を思ったかその女子を庇うように覆いかぶさり敵の襲撃を受けたのだ。
普段の彼らしからぬ行動に仙蔵も肝を冷やしたそうだ。


仙蔵「私が居たから良かったものの…。あいつも素直ではないからな。自分で思っているよりAのことを気にかけているんだろう」


「そうじゃないと今回のことで忍術学園一ギンギンに忍者をしていると豪語出来なくなるからな」と仙蔵は言った。
「そうだね」と伊作はクスクス笑う。

周りから見れば文次郎がAのことを気にかけているのは一目瞭然だ。
しかしそれは文次郎本人はおろか、Aすらも分かっていない。
文次郎とA以外からすれば片想い同士の甘酸っぱい青春劇を見せられている気分だ。

しかし当の本人たちはそんな気は全くない。Aに至っては本気で弟子入りする気満々で文次郎に近付いているからだ。
そして文次郎もまた本気で後輩である彼女に接している。

そんな二人を見守るのが、文次郎以外の6年生の役目。
あの小平太ですら「あの二人の関係性がよく分からん。私はどうすればいい？」と細かいことを気にするくらいなのだ。

そっと見守ることしか今は出来ないが、万が一…万が一、二人の間に先輩後輩以上の感情が芽生えたらその時はその時で手助けはしてやるつもりでいる。

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