【忍たま】君と紡ぐ物語

潮江文次郎-9 ページ22

…私は今、逃げているに過ぎない。最悪の場合を想定して逃げているんだ。
体は鍛えられても、勉強は出来ても、私の心はとんでもなく未熟だったということ。
大事な人が居なくなるなんて無理、考えられないそんなこと。
だったら、今までのことは無かったことにすればいい。私の憧れる潮江先輩はただの先輩で、私はただの後輩として必要以上に接しなければいい。

そう思った。そう思ったけど。


文次郎『お前は鍛錬も勉強も人一倍頑張っているようだが、まだまだ子供だな』


そう言って、潮江先輩は私の頭にポンっと手を置き優しく撫でる。
いつもは荒々しくわしゃわしゃと撫でるくせに…今は優しい先輩の手つき。じんわりと再び目頭が熱くなってきた。


文次郎『A、もう一度聞く。お前は本当はどうしたいんだ？』


私の心はすっかり見透かされているようだ。下唇を噛み締め必死に溢れ出そうになる涙を堪えた。
そして口を震わせながら言葉を紡ぐ。


「せ、先輩の弟子になりたいですぅ…」

文次郎『良いだろう、弟子にしてやる』

「ふぇ？」


我ながら情けない声が出た。
怒られそうだ、なんて思っていると先輩の口から出た言葉は私がずっと欲しかったモノだった。


「しぇ、しぇんぱい…いまなんて…？」

文次郎『俺の弟子にしてお前のその根性を叩き直してやると言ったんだ。…二度も言わせるな』

「うぅぅ…しぇんばぁぁい！！」

文次郎『なんっ、うお？！』


あまりの嬉しさに私は先輩に飛びつくように抱き着いていた。
その弾みで私と先輩もろとも後ろに倒れ込んでしまう。『き、急に抱き着つくんじゃない！離れんか！バカタレィ！』なんて大声で怒鳴っていたけど、声色からして先輩も満更ではなさそう。それに先輩なら私を突き飛ばすことだって出来るはずなのにそれをしない。
「あははっ」と笑う私に先輩はこう言った。


文次郎『俺の弟子になるということは、今までの鍛錬と同じでは意味が無い。今まで以上にギンギンに鍛錬をするからそのつもりでいろ』


先輩の上に乗っかったまま、私は先輩の顔を見つめ満面の笑みを浮かべ『はいっ！どこまでもついて行きます！』と返事をした。
潮江先輩は私をまるで自分の子供を見るような優しい目で見ていた。
そんな先輩を見て私は再度決心する。




潮江先輩、私ーーーーー

絶対に一流の、潮江先輩に匹敵する…いえ、それ以上の忍者になってみせます！

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