【忍たま】君と紡ぐ物語

立花仙蔵ｰ5 ページ12

片眉を下げ、困ったように笑う彼は何処か嬉しそうだ。
少し躊躇ったが目の前にいる彼の腰に腕を回し、飛び付くように抱き着いた。
恋仲になったのはつい最近、加えて彼が私を好きなのかどうかすら怪しく思っていたのでこういう事をするのは控えていた。
でも、先程彼の口からちゃんと『愛しい人』と言われたのを忘れていない。
そんな私を優しく壊れ物を扱うかのようにそっと抱き締め返してくれた。ゆっくりと顔を上げ、彼を見上げる。


「仙蔵くん」

仙蔵『…なんだ？』

「私が好きなのは仙蔵くんだけだよ」

仙蔵『…私もAだけを愛している』


『愛している』
胸がドクンと音を立てて高鳴る。言葉、仕草、全ての事から私を大切にしてくれている事が分かる。
自分だけが好きだと思っていた。でもそうじゃない。彼もまた私を好きでいてくれている。それが何よりも嬉しい、幸せだ。
目を細め、優しく、慈しむように私を見つめる彼の瞳に吸い込まれそう。


仙蔵『そんな顔で見つめられると口吸いしたくなるのだが？』

「そ、そそそんな顔で見てた？！ご、ごめん…」

仙蔵『ふっ…さてと』

「え…なんっ、ひゃぁ？！」


不意に浮遊感に襲われ思わず声が出た。私の脇の下と膝の下に腕を回し入れられ、所謂お姫様抱っこをされている。
仙蔵くんって見た目とは裏腹に力あるんだ…じゃなくて！！


「あの、その…は、恥ずかしいんだけど…」

仙蔵『どこかの誰かさんは私のモノだという自覚が無いようだから今日はこのまま学園生活を送ろうと思う。さぁ、行こうか、私の愛しい姫』


わぁ〜…文次郎の名前の件を根に持ってらっしゃる。
にっこりと微笑みながらそのまま用具倉庫を出ていく彼。逆らえない空気を醸し出していたので大人しく抱っこされたままその日は学園生活を送った。そしてそれを見た周りが困惑していたのは言うまでもない。


どんな仙蔵くんも大好きだけどねって話。

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