転生者な柱、救った命を愛したい ~私、お姉ちゃんになります~← 4

目覚め ページ2

そよそよと葉が擦れ合う音が聞こえる

頬を柔らかな風が撫でる

弾けるような日の光が私の瞼を刺激する

あんなにも重ったかった瞼が開いた

目に入るのは茶色い天井

ここは、蝶屋敷か


ずっと、長い夢を見ていた気がする

どんな夢だったかは覚えていない。だけど、何だかとても懐かしくて、ちょっぴり泣いてしまいたくなるようなあたたかい夢だった

私は、鱗滝A

カナエちゃんと一緒に上弦の弐.童磨と戦い、傷を負って眠っていたんだ

静かに頭の中を整理する

私はどれくらい眠っていたのだろう?そんなに時間が経ってないと良いな

それよりもカナエちゃんは無事だっただろうか。そっちの方がずっと心配だ

力を入れて体を起こそうとする

しかし中々力が入らない。あの寝すぎた時と体の痛さに似ている

一週間?下手したら一ヶ月くらい寝てたのかもな…

やっとのことで体を起こし、窓の外を眺める

この部屋は蝶屋敷の病室の二階だな。ここから丁度出入り口が見える

耳をすませば自然の音とともに、子供の声が聞こえてくる

何だか、平和って感じがして良いなぁ

また新たにそよ風はやってきて、私の髪をもてあそぶ

そういや長くなったな…。錆兎に髪切ってもらおうかな

……いや、喧嘩したまんまだったな。早く謝らないと

だけど今は

少しだけ、もう少しだけこの一人の時間を過ごしてみたい

こんなにもお天道様が綺麗なのだから







義「……A…姉さん…?」

ゆっくりと声の方に目を向ける

そこには青い目を大きく見開いた義勇がいた

人の気配に気付かないなんて、余程なまってるか外に集中してたんだな

『義勇。』

久しぶりに声を出したから掠れるかと思ったがちゃんと出た

義「A、姉さん…!A姉さん…!!」

名前を呼べば、義勇は私の元にやって来てお腹の辺りに抱きついてくる

思ったより勢いが良かったが何とか受け止められた。頑張った自分

義勇の癖のある少し柔らかい髪を撫でる

仄かな温もりがあって、私が生きていることを感じられた

『ごめんね。心配かけたよね。』

義勇からの返事はない。その代わりに腰に回されている腕が強くなった

若干お腹の辺りがじわりと滲むように温かくなったのは義勇の涙だろうか

『あれ、泣き虫な義勇に戻っちゃった?』

義「……A姉さんのせいだ。」

『そっか。…私のこと、待っててくれてありがとう。』

漸く義勇は顔を上げて、優しく笑ってくれた

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