自己愛、12 ページ16
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血が繋がっている人の一言って本当に凄いと俺は思う。
姉のあの一言がまさか、こんなにも俺を変えてしまうとは。
……苗代さんがあの日以来可愛すぎて辛い。
もはや気色悪いと言われても仕方ないだろう。恋心って怖いな。芽生えてからそれほど時間は経っていないと言うのに。
席替えをおこなってから2日後。俺の気分はまたも最高潮だった。
現在は家庭科の時間。そして授業内容は――カップケーキの調理実習。
調理実習の本来の目的は知らないが、
おそらく将来料理に困らないようにするための準備のようなものだろうと俺は思っている。
少しだけでも調理することが出来れば困ることはない……はずだからな。
しかし今回はカップケーキなどといういかにも「女子が作るもの」オーラが纏わりついている食べ物を作らなければならない。
きっと菓子作りに興味のない男子全員が「勝手に作ってろよ……」と思っていることだろう。
数日前の俺も、「菓子作り興味ありません」グループの候補だった。
(勿論そんなグループは存在しないが俺は一種の暗黙の了解だと理解している)
――だが今回からは違う。
家庭科の授業は主に、班作業が多い。調理実習も班作業の一つだ。
その為、料理上手なヤツがいる班は大変羨ましがられる。
そして俺の班には苗代さんがいる。
調理実習の際は必ず衛生上の事を考えてエプロンを着用しなければならない。
好きな女の子のエプロン姿を見れるという状況で喜ばない男が果たしているのだろうか。
「いっつ」
同じ班の男子が声を上げて我に返る。駄目だ。集中しないと……。
「あー……血出た」「大丈夫か?」「や、ちょっと切れただけだって。舐めときゃ治るよ」
どうやらチョコレートを刻んでいた時に、指を少し切ってしまったらしい。
……俺の分だけチョコレートを入れないようにしてもらおう。いくら刻まれてると言っても嫌いなものは嫌いだ。
「ひ、っ」
――俺の隣で小さく悲鳴を上げた苗代さんは何故か酷く怯えていた。
その様子に気づいた先ほどの男子が声をかけると、苗代さんは苦笑いをして「何でもない」と返した。
……血が、苦手なのかな。
苗代さんはずっと見てくる俺に疑問を覚えたのかチラリとこちらを見てきた。
目合うが苗代さんの瞳を直視できなくなってそっと逸らした。
それでも心臓の鼓動は、消えなかった。
(カップケーキに使った砂糖の分量に間違いはなかったはずなのに
どうしてこんなにも甘く感じるのだろう)
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コショウ(プロフ) - 佐仲えなさん» 実は話数がギリギリの状態で、書かないまま終わってしまう話がいくつかあるのですが、そう言っていただいたことがあまりにも嬉しくて(私自身もやっぱり書きたいので笑)今対処法を考えているところなんです。コメント本当に有難うございます、頑張ります! (2017年2月20日 14時) (レス) id: 853a3814c9 (このIDを非表示/違反報告)
佐仲えな(プロフ) - すごく面白いです!!苗代ちゃんと錦織くんが今後どうなっていくのか、お父さんの話も含めて楽しみにしています!!錦織くんも好きですが、柳くん好きです笑笑更新頑張ってください!! (2017年2月19日 20時) (携帯から) (レス) id: 42a52683ca (このIDを非表示/違反報告)
コショウ(プロフ) - かさくらさん» コメント有難うございます、そんなに初期の頃から読んでいただいてとても嬉しいです。ゆっくりにはなってしまうと思いますが、これからも頑張っていきたいと思います! (2015年7月2日 0時) (レス) id: bcc65b8e5f (このIDを非表示/違反報告)
かさくら(プロフ) - 13年からずっと読んでました……また更新されて嬉しいです! すごく面白いのでまたお目にかかれるのが嬉しいですが、無理なさらずどうかご自愛ください。 (2015年6月30日 23時) (レス) id: d71098d539 (このIDを非表示/違反報告)
コショウ(プロフ) - メーア=シュネー@露領#日帝受け推奨委員会さん» コメント有り難うございます、そう言っていただけて嬉しいです。励みにさせていただきます! (2015年6月26日 14時) (レス) id: 65f917b18d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:コショウ | 作成日時:2013年10月23日 17時