MIU : 053 ページ4
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私の質問に答えるより先に聞きたいこと?
頭の中で伊吹さんの言葉を反芻しながら、電話の向こうの音に耳を傾けた。
水を出す音、止める音。それから嚥下音。
ゴクッゴクッと喉を鳴らす音は妙に生々しい。
スマホを隔てているとは言え、耳元にダイレクトに聞こえるそれに体中の血液がぶわりと沸き立つ感じがした。
一呼吸置いた後、伊吹さんは「あのさ」と呟いて、そして。
伊吹「今から聞くことは刑事としてじゃなくて、俺一個人としての話ね?おっけー?」
まぁまぁ真剣な声音で前置きをおいた。
『分かりました』
いつの間にか月は雲に紛れて朧げに浮かんでいた。
伊吹「単刀直入に聞いちゃうんだけどさ。花井ちゃんとさっきの金髪くんってどんな関係?」
さっきの金髪くんとはレンくんの事か。伊吹さん、レンくんの事を名前で呼ぶ気はなさそうだ。
しかも関係と言われるとなんとも説明し難いのだけれど。
『レンくんとは幼稚園の送り迎えで会った時にちょっと喋るくらいだから──幼稚園の先生と園児の保護者的な感じ?ですかね』
伊吹「ん??……せんせーとほごしゃ?せんせーとほごしゃ…」
『あの……伊吹さん?』
伊吹「いや、ダメダメダメ。なんか臭うじゃんそれ…」
『え?なんですか臭うって』
伊吹「いやだってさ。ふたり随分と親しげに話してたじゃん。あれはただの“ せんせーとほごしゃ ”って雰囲気じゃなかった」
『どんな雰囲気ですかそれ』
伊吹「んーー。例えばちょっとこう、ウフッな感じってゆーか」
出た、ウフッ。
『違いますよ。レンくんはただの顔見知りです。ケイくんがいなかったら繋がりなんてなかったですよ』
あんな不良と関わったことなんて一度も無いくらい、私の人生は平々凡々としていた。
それに彼はまだ10代。私はもう成人したいい大人。
伊吹さんで言うところのウフッにはなる事はまず無い。
だけど伊吹さんはまだ納得してくれなくて。
「んー」とか「でもなぁ…」とか唸り声を上げて呟いていた。
伊吹「なんかなぁ…なーんかこの辺で引っかかるんだよなぁ…」
『何がですか?』
伊吹「んーー。なんだろうなぁ」
キィキィと椅子を動かす音が聞こえる。
『私とレンくんの事、そんなに気になるんですか?』
伊吹「なるよ。ならないわけないじゃん。そんなの」
あれ?いつの間にエアコン切れたんだろう?
ゴォゴォと動いたままの白いエアコンを見つめて、そんなことを思う自分がいた。
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理音(プロフ) - 続き気になります!更新楽しみにしています! (10月14日 20時) (レス) id: d2e2ccbd11 (このIDを非表示/違反報告)
うさぎ(プロフ) - nartosasuke1010さん» お返事ありがとうございます!あーいいですね(///∇///)そういうのもアリかも!!! (2021年5月3日 22時) (レス) id: f502ef816a (このIDを非表示/違反報告)
nartosasuke1010(プロフ) - 志摩と伊吹が取り合うバージョンはドラマ沿がいいです!主人公も4機組に移動になって404にはいる感じがいいです! (2021年4月29日 23時) (レス) id: d944f1cd48 (このIDを非表示/違反報告)
うさぎ(プロフ) - nartosasuke1010さん» わー!ありがとうございます!未だ見てコメント下さる方が居てくれて嬉しいです〜(^^)志摩ちゃんのお話も取り合いもいいなぁ〜!!!どんな感じのお話が見たいですか〜? (2021年4月23日 20時) (レス) id: f502ef816a (このIDを非表示/違反報告)
nartosasuke1010(プロフ) - 楽しく見てます!志摩バージョンや志摩と伊吹が主人公を取り合う長編も見て見たいです! (2021年4月19日 5時) (レス) id: d944f1cd48 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:うさぎ | 作成日時:2020年8月8日 21時