狐少女は知っている (ページ19)

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おかしいよページ19

貴方side

貴方「うん､おかしいよ｡｣

私たちの緊張が途切れ､立花さんが息をのんで聞いてきた｡

立花「なにがおかしいの？」

和典はゆっくり立ちあがり､立花さんたちのほうに向きなおった｡

上杉「６連のダイアル錠なら､簡単にあけられる｡｣

立花さんがびっくりしてる｡

立花さんの自転車もそうなんだろう｡

立花「本当？」

立花さんが聞くと､黒木がうなずいた｡

黒木「耳で音を聞きながら､数字を順番に試していくんだ｡６連なら２分もあれば軽い｡｣

立花さんが固まった｡

上杉「ところが犯人は､どうやらダイヤル錠をあけなかったみたいだ｡｣
　「かわりにチェーンを切っている｡ほら､チェーンのビニールコーティングの切れはしだ｡｣

差しだされた和典の指先には、黄色のビニールが粉のようについていた｡

貴方「この様子だと､切ったっていうより､引きちぎったっていうほうが近いかもしれないね｡｣

若武が､目を見張った｡

若武「ダイヤル錠をあけずに､わざわざチェーンを引きちぎった！？」

上杉「おかしいだろ？」

そう言った和典のそばで、和彦が大声をあげた｡

小塚「わかった！犯人は､頭が悪くて力のあるヤツなんだ｡」

和彦､かわいいけど...

黒木が和彦を見て､ちょっと笑った｡

黒木「それ､おまえじゃないの｡｣

和彦は､ブッとふくれて横を向き､となりで若武が首をひねりながら腕を組んだ｡

若武「力の強い動物とか､かな。ゴリラとか...」

立花さんが叫んだ｡

立花「なんでゴリラがとつぜん､秀明に現れるわけっ！？」

ちょっとうるさい｡

若武が､いやな顔で立花さんを見た｡

若武「たとえばの話だろ｡｣

立花「たとえが悪いわよ｡｣

言いかえした立花さんが和臣とにらみ合っていると､和典が言った｡

上杉「壊れたチェーンが､どこかに落ちているはずだ｡捜せ､それが手がかりになる｡｣

それでわたしたちは､そこら中を引っかきまわした｡

ゴミ箱を持ちあげたり､ビールケースの中をのぞきこんだり､

積みあげられている古いパチンコ台の間を透かして見たり｡

スナックやパチンコ屋さんから誰かが出てきて怒るんじゃないかと思ったけど､ヘーキだった｡

立花さんは心配そうだったな｡

やがて､うれしそうな声が上がった｡

小塚「あったっ！」

ふり向くと､和彦が道路わきの側溝の中から､ドロにまみれたチェーンを持ちあげていた｡