契約ニテ、候フ【父様】 (ページ12)

今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:13,086 hit

拾噺ページ12

「そろそろ床に就こう」

「おいで、夜卜」

房室に敷いた二人分の床をトントンと軽く叩き、此方に来るように促す。

「はぁーい、かかさま！」

未だ慣れない呼ばれ方に苦笑いを零す。

小さくゆらゆらと揺らめく蝋火にフッと息を吹きかけ細い煙が上がるのを確認する。

「御前もいいか？」

「嗚呼」

暗闇に差し込む淡い光を頼りに床に並び寝る。

夜卜を中心に、男と俺が左右に取り囲むように。

「夜卜、寒いか？」

「ん、かかさまありがとう」

ホゥっと白い息を吐き、ぶるりと身震いをした夜卜に掛け布団を手繰り寄せ喉元まで引き上げる。

「そうか、寒いか。―――ならばこれでどうだ！」

「うわっ！」

唐突に背を引かれたかと思えば、夜卜と共に男に抱き竦められ、身動きが取れなくなっていた。

その腕力ときたら同じ男だと言うのに己が非力に感じるほどだ。

「かかさまもととさまもあったかい！」

抱き竦められた間からコロコロと鈴を転がす様に笑う夜卜に、偶にはこの様な事も悪くはないとつられて笑みを零した。