人生レスタース【 wrw.rd 】 (ページ12)

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「 …あ、障害物の規定数、1人超えてる… 」

「あ、じゃあ俺抜けますよ」

ー委員長の呟いた言葉に、何の企みもないような普段と至って変わらない顔で告げた隣の席の彼。周りの女子からは残念がる声や、同じく障害物希望の男子に諦めるよう勧める様子がとれた。それすらも彼の掌の上で転がされていると知れば、彼女達はどう思うのか。

ー最低だと罵り、今迄とは打って変わった対応をして罵倒するのか。其れとも、【ソレ】すらも愛だと感じ喜んで彼の掌で踊ろうとするのか。何方とも取れるからこそ、女は怖い。いつだって全てを変えてしまう元凶だと、そんな甘い言葉だと信じてしまう。

ーいけないな、こう、何時も深く考えてしまう癖。いつからなのかは覚えてないが、あまり良いものでもない。控える様精進しよう。

「え、あ、しょ、っぴさま、私が、抜けますので、希望の方へ、」

ー声を発したのは教卓から1番近い廊下側の席に座る女子生徒。おどおどしつつショッピくんの方を見ては周囲の反応を気にする。察しのいい人なら分かる通り、彼女はクラスの女子に抜けるよう命令されている。あまり他者に口を挟むのは好まないが、クラスの女子も勿論のことだが、彼女にも非はある。自身の気持ちを周囲に伝えられないようじゃ、生きていけない。きっと何処かで息苦しくなって、やり直したくなって、死んでしまう。

ー関係ないと言えばそうなんだが。

「いや、俺が入るって言って人増えたんで。責任くらい自分で取れます。」

「あ、し、失礼、しましたっ、ご、ご無礼を、お許し下さ、いっ」

ー少しだけ表情が動いたーと言っても眉が動いたくらいだがーショッピくんの言葉が怖くなったのか慌てて謝罪と共に頭を下げる彼女は、まるで犬か何かのようで。少し愛らしさを覚えたが、その気持ちも直ぐに消されるような言葉に耳を塞ぎたくなった。

「 …じゃあ、ショッピさんは空きのある紅白対抗リレーで。」

ー私と彼は、出席番号も近くて体力も同じくらい。お互いに隣にいても可笑しくない立場上。これらを踏まえた上で、【敵チーム(白組) 】の彼と共に競わない気がしない。

ー一気に憂鬱になる気持ちとは裏腹に、快く承諾してこちらを見た彼はにっこりと笑って私にこう言った。

「楽しみやな、体育祭。」

『 …とっても』

ー嗚呼、一体何が楽しみなんだ。目立ってしまうじゃないか、馬鹿野郎。