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アイスをかじりながら、来た道を戻る。帰り道は、やけに静かだった。
風で木の葉同士が擦れ合い、さわさわと音を立てる。すぎるくんが押している自転車の車輪が、カラカラと鳴り響いていた。
私は先ほどから様子のおかしいすぎるくんが気になって、ちらりと隣を盗み見た。すぎるくんの顔は、何か悩んでいるような、考え込んでいるような、そんな感じだ。
「すぎるくん、なんかあったら言ってね」
「え？」
「私じゃ頼りないかもしれないけど、すぎるくんにはいつも助けてもらってるから」
悩みがあるなら、力になってあげたい。そんな思いを込めて、私はすぎるくんを見つめた。
すぎるくんはふっと頬をゆるめると、「ありがとな」と優しい声音で言った。
「でももうじゅうぶん救われてんで、Aには」
「私なんにもしてないけど……」
「Aがそばにいてくれるだけでええねん」
すぎるくんは微笑んだ。まるで愛の告白みたいな言い方に、かあっと顔が熱くなる。
彼も言ってから恥ずかしくなったのか、「今のナシで」と耳まで真っ赤にした。
赤い顔をして、ふたりして黙り込む。
「ハ、ハハハ。ごめんな、なんか」
「ううん。その、うれしいよ。そんなふうに言ってもらえて」
空笑いするすぎるくんに、私はぶんぶんと首を振った。
「それに、私もすぎるくんがいてくれるだけで元気になれるから」
「お、大げさやな」
「いやいや、本当だよ」
念を押すように言うと、すぎるくんは片手で顔を覆った。
「もー、ほんま……そういうこと言わんといてやぁ」
「あっ、照れてる？」
そう言って笑いながらすぎるくんの顔を覗き込むと、彼の目尻には水滴がきらりと光っていた。
まさか、と思って目を離せずにいると、すぎるくんはそっと顔から手を離し、潤んだ瞳で私を見た。
「す、すぎるくん？どうし――」
「A。おれな、卒業したら大阪戻ろうと思ってんねん」
「え……？」
「大学行かずに働こうと思ってて。向こうに親戚のツテがあるから、紹介してもらってな」
「そんな……聞いてない」
「うん、今初めて言った」
すぎるくんは力なく笑う。「なんで」とか「もっと早く言ってよ」とか、言いたいことはたくさんあるはずなのに、喉に何かがつっかえたみたいに、ひとつも出て来なかった。
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みかん - 好きです。ずっと応援しております。 (2020年10月31日 21時) (
レス) id: e8dff2febb (このIDを非表示/違反報告)
いちご(プロフ) - 更新お疲れ様です！毎話とても素敵です（ ; ; ）これからも応援させて頂きます(*´-`) (2020年7月10日 18時) (レス) id: 953a850615 (このIDを非表示/違反報告)
ささき(プロフ) - のあさん» コメントありがとうございます！そんなふうに言っていただけて光栄です。遅筆ですみません、がんばります！ (2020年7月8日 23時) (レス) id: a1167b4d39 (このIDを非表示/違反報告)
のあ(プロフ) - 本当に生きがいです、、頑張ってください（ ; ; ） (2020年6月26日 19時) (レス) id: cc2606b39f (このIDを非表示/違反報告)
ささき(プロフ) - nullさん» ひぇ〜〜〜ありがとうございます…私も皆さまからの評価やコメントが生きがいに繋がってます、ありがとうございます…！ (2020年6月7日 19時) (レス) id: a1167b4d39 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ささき | 作成日時：2020年5月15日 15時
