13 ページ13
「で、どっちにするか決めたん?」
メリーゴーランドのあと、すぎるくんがふたりに尋ねた。ハッチが「すぎるさん絶対飛ばすから」とすぎるくんの右腕にくくりつけた風船が、ふわふわと揺れている。
「考えたんですけど……お化け屋敷の方がまだ! まだ、マシかなって……」
「おれも……みんな一緒だし……」
メルヘンなアトラクションに乗ったあととは思えないほど、どんよりとしたテンションのハッチと蘭たんが答える。
「じゃあ、ふたりの気が変わらないうちに行きましょう」
「え!ほんとに?もう行くの?」
「ちょ、いったんさ、もう1回メリーゴーランド乗るってのは?」
「はいはい、行くよー」
私たちは悪あがきをするふたりを引っ張って、お化け屋敷の前にやってきた。
「何名様ですか?」
「あ、5人です」
お化け屋敷の入り口にいる係りのお姉さんに、手をパーにして示す。お姉さんは私たちを目視で確認したあと、「すみません」と手を合わせた。
「通路が狭いので、一度に入るのは4人までになってるんです」
「ほな、さん、にーで分かれよか」
「おれ辞退しようか?」
「蘭たん、アレ乗るん?」
「……乗らない」
すぎるくんの指の先にあるジェットコースターを見て、蘭たんはぶるりと身震いした。
「グーパーでいいよね?」
「おう。ほないくで!」
すぎるくんのかけ声で、みんながいっせいに手を出す。すぎるくんはパー。蘭たんもパー。ハッチの手も開かれていて、拳を握っているのは私としゅーさんだけだった。
「……きれーに分かれたな」
「しゅーさん、がんばろうね」
「はい、がんばりましょ」
しゅーさんは優しい目を細めて、にっこりと笑う。すぎるくんはそんなしゅーさんの肩を掴んだ。
「しゅーさん!」
「声デカ……なんですか」
「暗闇に乗じてAに変なことしたらアカンで!Aも気ぃつけや!」
「変なことなんてそんな……しないですよ」
「なんやねんその意味深な間はぁ!」
しゅーさんはすぎるくんの声など聞こえていないかのように、涼しい顔で私の手をとった。
「Aちゃん、先に入っちゃいます?」
「え、あ、うん。行こっか」
「お先に2名様ご案内しまーす」
後ろですぎるくんが「言ったそばから!」と大声で騒いでいる。苦笑する係りのお姉さんに誘導されて、私としゅーさんは真っ暗闇に足を踏み入れた。
81人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みかん - 好きです。ずっと応援しております。 (2020年10月31日 21時) (レス) id: e8dff2febb (このIDを非表示/違反報告)
いちご(プロフ) - 更新お疲れ様です!毎話とても素敵です( ; ; )これからも応援させて頂きます(*´-`) (2020年7月10日 18時) (レス) id: 953a850615 (このIDを非表示/違反報告)
ささき(プロフ) - のあさん» コメントありがとうございます!そんなふうに言っていただけて光栄です。遅筆ですみません、がんばります! (2020年7月8日 23時) (レス) id: a1167b4d39 (このIDを非表示/違反報告)
のあ(プロフ) - 本当に生きがいです、、頑張ってください( ; ; ) (2020年6月26日 19時) (レス) id: cc2606b39f (このIDを非表示/違反報告)
ささき(プロフ) - nullさん» ひぇ〜〜〜ありがとうございます…私も皆さまからの評価やコメントが生きがいに繋がってます、ありがとうございます…! (2020年6月7日 19時) (レス) id: a1167b4d39 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ささき | 作成日時:2020年5月15日 15時