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「いっそ3人で行くのもありやけどな」
すぎるくんはにやりと笑って、私としゅーさん、そして自分のことを順番に指差した。しゅーさんも意味深に笑って「いいですねえ」なんて言っている。
もちろんそんな提案にハッチと蘭たんが賛成するわけもなく、ふたりはキッとすぎるくんをにらんだ。
「それはなんかやだ」
「でも蘭たん行きたくないんやろ?」
「別にそういうわけじゃ……」
「あーもう!」
「お、腹を決めたかハッチ!」
「いいよ。わかったよ、行くよ!」
ハッチはがしがしと頭をかいた。それに続いて「おれも行く」と蘭たんが手を挙げる。
すぎるくんに上手いことのせられてるなあ、とつい笑ってしまいそうになるけど、ふたりにとっては笑い事じゃなさそうだ。
「ねえ、無理しなくていいんだよ?水族館とかも楽しそうだよね。ほら、最近できたとこ」
じっとチケットを見つめて、難しい顔をしているハッチと蘭たんに言う。遊園地じゃなくても、5人で楽しめるのならどこだっていい。
でも蘭たんはふるふると首を振った。
「Aは行きたいんでしょ?」
そんなふうに聞かれると思っていなくて、一瞬言葉に詰まった。そりゃあめちゃくちゃ行きたいけれど、ハッチと蘭たんに無理をさせたり、退屈な思いをさせたりしてまで行きたいとは思わないというのが私の気持ちだ。
そう伝えようと口を開いた私の声を、ハッチが遮った。
「無理するなって言うなら、Aもね」
「え?私無理なんかしてないよ」
「それならおれも無理してるんじゃなくて、Aと……みんなと、行きたいから行くだけだから」
「そうそう。いいこと言うわぁ、蘭たん」
ハッチに褒められて、蘭たんは得意げに笑った。
ふたりにそんなふうに優しく言われてしまっては、私は素直になるしかなかった。
「私、みんなと遊園地に行きたいです!」
天に向かってぴんと腕を伸ばす。
4人はにこりと微笑んで、大きくうなずいた。
「よっしゃ、決まり!」
すぎるくんは音高く手を叩いた。
遊園地のホームページが開かれたすぎるくんのスマホを、みんなで囲む。
「おれでも乗れそうなやつあるかな……」
「メリーゴーランドありますよ」
「メリーゴーランドか……」
蘭たんとハッチは「あり?」「いやなしだろ」とひそひそ話している。
やっぱり無理してるんだと思うけど、『みんなと行きたい』というさっきの言葉は嘘じゃないだろう。
私たちは子どものように騒ぎ、ときおりお母さんに怒られながら、計画をたてるのだった。
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みかん - 好きです。ずっと応援しております。 (2020年10月31日 21時) (レス) id: e8dff2febb (このIDを非表示/違反報告)
いちご(プロフ) - 更新お疲れ様です!毎話とても素敵です( ; ; )これからも応援させて頂きます(*´-`) (2020年7月10日 18時) (レス) id: 953a850615 (このIDを非表示/違反報告)
ささき(プロフ) - のあさん» コメントありがとうございます!そんなふうに言っていただけて光栄です。遅筆ですみません、がんばります! (2020年7月8日 23時) (レス) id: a1167b4d39 (このIDを非表示/違反報告)
のあ(プロフ) - 本当に生きがいです、、頑張ってください( ; ; ) (2020年6月26日 19時) (レス) id: cc2606b39f (このIDを非表示/違反報告)
ささき(プロフ) - nullさん» ひぇ〜〜〜ありがとうございます…私も皆さまからの評価やコメントが生きがいに繋がってます、ありがとうございます…! (2020年6月7日 19時) (レス) id: a1167b4d39 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ささき | 作成日時:2020年5月15日 15時