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#8 ページ9

「……ッ」


カッターナイフで切りつけられた左腕を咄嗟に抑えるが、ポタリポタリと鮮明な血が床に落ちる。

衝撃で渡り廊下の壁に背をぶつけそのまま座り込む。


「俺はなぁ、ずっとお前を探してたんだよ……!!」


カッターナイフをその場で投げ捨てると男は今度は拳を振り上げた。


その瞬間にあの頃の記憶が鮮明に甦ってくる。

私達を喰おうと襲いかかってくる鬼。
そんな怪物に生身で交戦する私達。


ヒュウッ


私の心拍数が一気に上がり、肺が大きく動くのを感じる。

現代に鬼なんて居ないと思ってた。
でも、目の前にいるのは……



「やめろぉぉおお!!!!」



ゴンッ

鈍い音がしたかと思えば男は私の足元に倒れ込む。
そして男の背後を取り掴みかかる誰か。

朦朧とする視界の中で必死に現状を確認しようとした。


「お前は何をやっているんだ! こんなこと許されないぞ!」
「ッ! 離せクソガキ!」


あの頭突きを喰らってもなお暴れようとする男を押さえつけているのは、後輩の炭治郎だった。

記憶を持っている炭治郎とは、現代でも何かと接点がありよく話す。


「ぐぬぬ! Aさん逃げて!」
「ッ……は……」


逃げるもなにも、息が上がって立ち上がることすら出来ないのだ。

この感覚は"呼吸"と同じ。
しかし、現代の私は呼吸に耐えられるほどの訓練をしていないため体が追いついていないのだ。

もちろん、腕の出血が止まることもない。

完全に脳が記憶を呼び起こし、"呼吸"を使って戦おうとバグを起こしている。


ダメだ、息が整わない、苦しい。



「何をしている!」


その低く水流のような声が耳に届いた時、私は一瞬だけ呼吸が和らぐのを感じ取った。


「わっ!」
「絶対に逃がさない!!」


男が炭治郎を振り切り私に向かってこようとする。

しかし、誰かが私の目の前に立ちはだかる。
視界はほぼ不鮮明だったけれど、真っ青なジャージでそれが誰なのかはっきり分かった。


冨岡先生だ……。


「どけ!」


男は先生にまで襲いかかるけれど、腕を捕まれ背負い投げを食らわされる。

ゴンッという鈍い音が響き、男はピクリとも動かなくなってしまった。


すぐに炭治郎がしゃがみ私の肩を支えてくれる。


「Aさん! あぁ、こんなにも血が!」
「炭治郎、Aさん無事か!?」
「うおおおやべぇぜ! お、おい青ジャージ!
なんとかならねぇのか!」


冨岡先生を呼んできてくれたのだろう、善逸と伊之助も私によってきて何やら騒いでいる。

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中川さおり(プロフ) - このシリーズが出来たらまた読みたいです (11月19日 11時) (レス) @page47 id: 70c247066b (このIDを非表示/違反報告)
莉子 - 私も義勇さんが大好き過ぎるので、なかなか読むのが辛かったですが笑、こんな風に前世で繋いだからこその縁がある、というのがまた素敵で、感動しました( ; ; )次回作も首を長くしてお待ちしております!質問コーナー楽しみです!また読み直してみようと思います! (2021年9月23日 11時) (レス) id: da7568f49d (このIDを非表示/違反報告)
莉子 - 完結おめでとうございます( ; ; )このお話が立ち上がってからのファンですが、本当に物語の世界観と作者様の文章が好きで、更新待ちしている時も何度も読み返してました。更新される度に嬉しくて舞い上がってすぐ読むくらい、大好きでした泣。本当にお疲れ様でした! (2021年9月23日 11時) (レス) id: da7568f49d (このIDを非表示/違反報告)
義勇と杏寿郎推し - 完結おめでとう…。いい話だった‥。幸せに終わった、良かった。これでお別れだな。面白かった。これからも頑張ってくれ。冨岡義勇だ。 (2021年9月23日 7時) (レス) @page47 id: 2a3c5f3e4e (このIDを非表示/違反報告)
義勇と杏寿郎推し - このまま義勇さんと結婚して欲しい!夢主とどうなるか楽しみにしてます。 (2021年7月31日 8時) (レス) id: 2a3c5f3e4e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ももりんご | 作成日時:2021年1月27日 3時

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