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「それで? どうして黙ってたのでしょうか」
「いや、あんたに言ったら冨岡先生を殴りに行くと思ったから」
顔は穏やかな笑顔なのにおでこに青筋をピキっと浮かべる親友から目を逸らす。
今世ではもう3年の付き合いになるけど、前世からしのぶのこの圧力に勝てたことは1度もない。
今日は終業式でいつもより帰りが早いので、前々から蜜璃と3人で遊ぶ約束をしていた。
近所の大学に通っている蜜璃とこの後合流するため、私としのぶはカフェで時間を潰している。
客も少なく静かな店内には流行りのアイドルのBGMが流れていた。
「ほんっとうにおたんこなすですね。まぁ、怒るのはこの後です、聞きたいことが山ほどあるので」
「何がそんなに気になるのよ……」
「ではまず冨岡先生が結婚するということを知った時の経緯を。はい、どうぞ」
ニコニコと笑顔で手を差し伸べてくるが、その目は全く笑っていない。
私ははぁとため息をついて、話すと長くなるけどと前置きを置いてポツポツと話し始める。
それはつい1か月前の出来事だった。
その日は金曜日で、いつも通り生徒指導室で反省文を書くという作業をしていた。
3年間も同じ文章を書き続けているのだ。もはや脳内テンプレートである。
「先生、反省文書き終わりまし……た」
「あぁ。そこに置いておけ」
反省分を先生に渡そうと椅子に座る先生に近づいた時、ササッと手元を隠された。
でも私はその背中越しに先生の手元を一瞬だけ覗けた。
それは、指輪の写真が載った雑誌だった。
先生は紛らわせたつもりなのか他のプリントを上に乗せていたけれど、その頭から雑誌に貼られているのであろう付箋が飛び出している。
「先生、結婚するの?」
冨岡先生に彼女がいることは、元々勘づいていた。
毎朝顔を合わせては怒られて、毎週同じ空間に閉じ込められていれば少しは先生も私に心を許してくれていたのか、ドジがポロリと零れてしまうことがあったのだ。
その度に目を瞑っていた。
記憶を思い出してくれたら、もしかしたら、私を選んでくれるんじゃないかって期待していたから。
でも、そんな兆しは1回も感じられなかった。
体育祭で一緒に荷物を運んでくれた時も、修学旅行で一緒に水槽の中の大きな魚を見た時も。
先生は、私の事なんか見ていなかった。
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中川さおり(プロフ) - このシリーズが出来たらまた読みたいです (11月19日 11時) (レス) @page47 id: 70c247066b (このIDを非表示/違反報告)
莉子 - 私も義勇さんが大好き過ぎるので、なかなか読むのが辛かったですが笑、こんな風に前世で繋いだからこその縁がある、というのがまた素敵で、感動しました( ; ; )次回作も首を長くしてお待ちしております!質問コーナー楽しみです!また読み直してみようと思います! (2021年9月23日 11時) (レス) id: da7568f49d (このIDを非表示/違反報告)
莉子 - 完結おめでとうございます( ; ; )このお話が立ち上がってからのファンですが、本当に物語の世界観と作者様の文章が好きで、更新待ちしている時も何度も読み返してました。更新される度に嬉しくて舞い上がってすぐ読むくらい、大好きでした泣。本当にお疲れ様でした! (2021年9月23日 11時) (レス) id: da7568f49d (このIDを非表示/違反報告)
義勇と杏寿郎推し - 完結おめでとう…。いい話だった‥。幸せに終わった、良かった。これでお別れだな。面白かった。これからも頑張ってくれ。冨岡義勇だ。 (2021年9月23日 7時) (レス) @page47 id: 2a3c5f3e4e (このIDを非表示/違反報告)
義勇と杏寿郎推し - このまま義勇さんと結婚して欲しい!夢主とどうなるか楽しみにしてます。 (2021年7月31日 8時) (レス) id: 2a3c5f3e4e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ももりんご | 作成日時:2021年1月27日 3時