#27 ページ28
何度口付けを交わしても、その触れ合う唇から流れてくる温度には慣れることが出来ない。
そうして、一体何時間が経ったのだろう。
あの後、先生の仕事が終わるまで適当に時間を潰し学校から離れた場所で待ち合わせをし、先生の車に乗り込んで先生の家に向かった。
まるで何かのタガが外れたかのように、私たちはどちらともなくお互いに貪り合う時間を過ごした。
婚約者の存在を口にすることは絶対になかった。
言ってしまえばそこまでだと思ったから。
2人寄り添ってソファに座り、楽しくもないバラエティ番組をテレビで流しながら淡々とした時間を過ごす。
時計の針は10を差していて、真っ暗な空にはキラキラと月と星が光っている。
｢……先生｣
恋人繋ぎをしていた手に、さらにもう片方の手を重ねながら先生を呼ぶ。
先生はなんだ、と呟きながら顔だけをこちらに向けた。
｢1週間だけ、あなたの時間を私にくれませんか？｣
それは私が初めて冨岡先生を自ら求めた瞬間だった。
お互いにこのまま一緒にいられるわけが無いことを知っているからこそ、私の決断は固かった。
____きっと、一週間で答えを見つけるから。
貴方を強引にでも私のものにするか、運命を受け入れるか。
先生は珍しく目を大きく開けて動揺していたようだったけど、少しだけ悩む仕草を見せたあと、ゆっくりと頷いた。
｢一週間だけ……俺は、お前の恋人だ｣
そう言いながら顔を近づけてくる先生を受け入れようと、私も目をつぶって顔を傾けた。
婚約者だとか、教師と生徒だとか、そういうことを全部忘れて。
たった一週間だけ義勇さんは私のものになる。
一瞬触れた唇は、私たちを嘲笑うかのようなぬるさだった。
〇
｢なにか……いいことでもありました？｣
今日の授業が全部終わり、教室掃除の時間になる。
少し面倒な掃除に憂鬱になりながらホウキでホコリを集めていると、同じくホウキを持ったしのぶがそう質問してきた。
｢どうして？｣
｢いえ、なんだか少し前より元気に見えたので。｣
｢そ、そう？ 特に何もないけど｣
一瞬ドキリと心臓を震わせたけれど、必死にそれを隠しながら口を動かす。
冨岡先生のことが他の人にバレたらとてもまずい。
特にしのぶに知られれば先生はもう教師を続けられないかもしれない。
何故かしのぶは前世から冨岡先生には当たりが強いのだ。
然るべきと頃に報告されたら非常にまずい。
私の返答に納得したらしいしのぶはそうですか、と呟き掃除に戻る。
その背中を見ながら私は盛大なため息を漏らした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 116人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
中川さおり(プロフ) - このシリーズが出来たらまた読みたいです (11月19日 11時) (
レス) @page47 id: 70c247066b (このIDを非表示/違反報告)
莉子 - 私も義勇さんが大好き過ぎるので、なかなか読むのが辛かったですが笑、こんな風に前世で繋いだからこその縁がある、というのがまた素敵で、感動しました（ ; ; ）次回作も首を長くしてお待ちしております！質問コーナー楽しみです！また読み直してみようと思います！ (2021年9月23日 11時) (レス) id: da7568f49d (このIDを非表示/違反報告)
莉子 - 完結おめでとうございます（ ; ; ）このお話が立ち上がってからのファンですが、本当に物語の世界観と作者様の文章が好きで、更新待ちしている時も何度も読み返してました。更新される度に嬉しくて舞い上がってすぐ読むくらい、大好きでした泣。本当にお疲れ様でした！ (2021年9月23日 11時) (レス) id: da7568f49d (このIDを非表示/違反報告)
義勇と杏寿郎推し - 完結おめでとう…。いい話だった‥。幸せに終わった、良かった。これでお別れだな。面白かった。これからも頑張ってくれ。冨岡義勇だ。 (2021年9月23日 7時) (レス) @page47 id: 2a3c5f3e4e (このIDを非表示/違反報告)
義勇と杏寿郎推し - このまま義勇さんと結婚して欲しい！夢主とどうなるか楽しみにしてます。 (2021年7月31日 8時) (レス) id: 2a3c5f3e4e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ももりんご | 作成日時：2021年1月27日 3時
