どうも特級呪霊です。2

悪魔の証明と人間の証明　※本誌内容含みます ページ36

****





薄気味悪い灰色の、のっぺらぼうの呪骸。

だが、すぐに人間のような形に変わった。
まるでマネキンのようだった。







夜蛾「今から、この呪骸を殺せ。
ただし、こいつが死ぬときに、『生き返ろ』と、
呪いながらな、殺せ。」



『…これを殺す？…なにを考えてるの？』



夜蛾「肉体の情報から魂の情報を複製し、
それを核に入れることによって、
呪骸は作られる。」


『！』


夜蛾「君の場合は、自身を生き返らせることができる…。
つまり魂の情報にプラスして、呪力の複製、肉体の複製ができる。月食の日という縛りは、単に君の呪力の制約の話だろう。

しかし、夏油の話が本当だとすると、恐らく他人だと肉体と記憶の複製ができない。この呪骸も他人同様、肉体の複製はできないが、目の前にある体に再度、複製した魂を入れることはできるだろう。」



『それが本当だったとしても、
夏油という男は複製に何十年もかかったことになる。
今すぐには呪骸は生き返らないんじゃない？』



夜蛾「人間の肉体というのは複雑だ。複製の面で、君と私は完全に同じだが、私は人間には入れることはできないし、自身の体を複製もできない。

…君は複製した魂を何らかの方法で、人間の肉体に探しにいかせていかせている。…だから、次に生き返るための人間の肉体を見つけるのに、時間がかかったんだろう。

まぁしかし、すぐ目の前に空いた肉体があれば
そこに魂が入り込むはずだ。」




魂と呪い…

生と死…

人間と呪霊…




『夜蛾』

夜蛾「…なんだ」

『もし、これで呪骸が生き返ったら、

私は______』




夜蛾「君は、人間だと証明されたことになる。」







肉体の自己複製、

呪力の自己複製、

魂の自己複製、

それを自分の呪力によって叶えていたのだろうか。







しかし、果たして、

呪力によって自分自身を複製し続ける私は、

人間だと言えるのだろうか。







『呪力で自分をコピーし続ける人間って…
それ、人間って呼んでいいわけ？』


夜蛾「常識では考えられないが、
それも魂の考え方次第だろう。」



『…そう』






目の前にいる灰色の人形呪骸。

これを殺して、願うだけ。

でも、……呪骸といえど殺すのは気が滅入る。





夜蛾「大丈夫だ。信じろ、己を」


『…』






私は、手に力をいれた。




別に夜蛾の言葉に鼓舞されたわけじゃない。


ただ、

500年分の思いをどうすればいいのか、わからなくて、

この呪骸にぶつけようとした。

呪霊ではない→←本当の姿　※本誌内容含みます

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す