呪いの言葉を撤回する ページ32
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七海健人
戻ってきた五条さんはソファに前のめりになって座り、
膝に肘を乗せてずっと何かを考えていた。
Aさんを京都に連れて行くかどうかをずっと悩んでいるようだった。私から言えることは何もなかった。「協力します」とは口では言えるが、どのように協力できるかなんて考えることすらできなかった。
五条さんをその部屋に残し、また彼女の文献を読もうと図書室へ向かった。その道中で、彼女と鉢合わせた。
『七海、』
彼女の表情は、五条さんとは正反対。
清々しく、迷いのない、晴れ晴れとした顔をしていた。
七海「はい。」
『…少し話そう。』
廊下に立ち尽くしたまま、彼女は話し始めた。
『私は、なんだかんだ七海を一番信頼している。』
七海「…五条さんはまだしも、乙骨くんよりも？」
『乙骨の場合は私情が入りすぎているし、五条は論外だ。』
七海「私には私情がありません、か…。
少し冷めたような話ですね。」
信頼とは言っても、距離があるからこそ生まれる信頼。
『私情がないとは言ってない。』
彼女は本当に呪霊じゃないみたいだ。
人間の繊細な気持ちが入り乱れている。
『______これ、』
ポケットからA4が四つ折りになった紙を渡してきた。
七海「…」
それを受け取った。
『さっき、夜蛾に会ってきた。
長居するつもりはなかったんだけど、
ちょっと話し込んでしまって、』
七海「…」
『……もしかしたら、
全て間違っていたかもしれないから、
慌てて書いた。』
七海「間違っていた…？」
私がその紙を開けようとすると、
『まだ』と、
開こうとする私の手を小さな手が止めた。
『……事情は夜蛾に聞いて。
すべて終わったら、七海に頼むよ。
色々、書いたから。』
頼むよ、
という呪いは重い。
七海「…」
私が何も言わずに、
その紙を持ったまま立ち尽くしていると、
彼女は私の手に握っている手を開いて、
紙を取った。
七海「頼むんじゃなかったんですか…？」
『……嘘よ。実は、これ白紙』
七海「…」
彼女は笑いながら、紙を開いてみせた。
なにを試したかったんだろうか。
『本当のものは、夜蛾に託した。』
七海「なぜですか」
『…』
七海「なぜ、わざと紙を渡すような真似を」
問い詰めれば、
彼女の小さな手が私の頬に触れた。
それは温かく、優しい手のひらだった。
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弓月有無％(プロフ) - 初コメ失礼致します！オリジナルが多くある筈ですのに、凄く面白かったです。感涙しましたし本当に考えられていてすごかったです！！続編も続けて楽しませて頂きます！！ (3月6日 18時) (
レス) @page50 id: 1ab55170b6 (このIDを非表示/違反報告)
0000(プロフ) - 柚さん» はじめまして。お褒めの言葉をいただけて、とても嬉しいです。かなり不定期な更新となっていますが、これからも読んでいただけると幸いでございます。これからもよろしくおねがいします🙇♀️ (2022年4月14日 23時) (レス) id: 201e0a3aec (このIDを非表示/違反報告)
柚 - はじめまして！とても作品が面白かったので、今までで1番読み入ってしまいました！出来れば小説としてお金を払って読みたいぐらいです笑お話の細かい所まで考えられていて本当に凄いと思います..！作品を作るのは大変だと思いますがこれからも楽しみにして応援してます (2022年4月13日 23時) (レス) @page47 id: 05cc864757 (このIDを非表示/違反報告)
0000(プロフ) - ゆゆさん» ご指摘していただいた上に、このお話へのお褒めの言葉とお気遣い、本当にありがとうございます🙇♀️！歌姫先生の年齢は完全に私のミスですので、修正いたします。大変失礼いたしました。 (2022年4月4日 0時) (レス) id: da97561712 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ - ↓作者様にお願いがあるのですが，下のコメントを見た後は「ゆゆ」と言う名前でコメントされている二つのコメントを消して欲しいです。このような神作にこんなコメントを残したくありませんので，よろしくお願いします！ (2022年4月3日 22時) (レス) id: 05967b49de (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：。 | 作成日時：2022年2月14日 21時
