新しい過去 ページ30
悲しそうに私を見つめる乙骨。
そんなふうに見られても、受け入れてもらうしかない。
「じゃあ、私は七海と夜蛾のところに行ってくるから」
立ち尽くす乙骨をその場において、
高専の校舎のほうへ向かった。
.
七海はどこにいるかわからないが、
夜蛾はあの道場のような場所にいると思い、そこへ向かう。
ギギギ…と重い扉を開けると、大量の呪骸がいた。
呪骸からの微かな呪力が肌へ触れる。
低温やけどのようなこの呪力は夜蛾の呪力だろう。
「…」
一番大きな呪骸の陰から夜蛾が出てきた。
体は横を向いているが、サングラス越しに私を見ている。
夜蛾「悟から既に聞いている。
わざわざ出向くとは律儀なやつだな。」
『私、意外と真面目だから。』
そう答えると、夜蛾は呪骸の真ん中に座って、
ぷすぷすを針を刺し、新しい呪骸を作り始めた。
『…夜蛾、』
夜蛾「なんだ」
『ありがとう』
私がそういうと、手を止めて、
サングラスの隙間からギロリとこちらを見る。
「…」
この男はわかりにくい男だと思う。
長年生きてきて、
こんなにも表情と思考と呪力の流れが一致していない人間は初めてだった。
夜蛾「なぜ感謝する?」
低く重たい声が響いた。
この男に真面目に答えようと、
私が知りたい真意はきっと返ってこない。
『感謝したいから。』
だから私も、真面目には返答しない。
夜蛾「面白くないな。」
『アンタよりマシよ。』
夜蛾「…まったく失礼な奴だ」
私がなぜ感謝しているかわかりきっているのに、
わざわざ聞いてくるところも、
執拗に綿に針を刺し呪骸を作るところも、
見た目によらずかなり面倒くさい性格だと思う。
このまま長居するつもりもないから、
『じゃあ__』と、その場を立ち去ろうとすると、
「A」
夜蛾が私の名前を呼び引き止める。
夜蛾「…一つ聞きたいことがある」
『…』
夜蛾「君は呪霊操術の呪術師と遭遇したことはあるか?」
『…呪霊操術……』
“呪霊操術”
私は一番このタイプの呪術師を恐れていた。
もし取り込まれてしまえば、
その呪術師が死ぬまで自由はないからだ。
『ある』
思い出される鮮明な思い出。
500年も生きている私にとって、
50年前はまだ新しい記憶だ。
夜蛾「…それはいつだ?」
『50年ぐらい前』
50年前に会った呪霊操術の呪術師は28歳の男。
とても心優しい呪術師だった。
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弓月有無%(プロフ) - 初コメ失礼致します!オリジナルが多くある筈ですのに、凄く面白かったです。感涙しましたし本当に考えられていてすごかったです!!続編も続けて楽しませて頂きます!! (3月6日 18時) (レス) @page50 id: 1ab55170b6 (このIDを非表示/違反報告)
0000(プロフ) - 柚さん» はじめまして。お褒めの言葉をいただけて、とても嬉しいです。かなり不定期な更新となっていますが、これからも読んでいただけると幸いでございます。これからもよろしくおねがいします🙇♀️ (2022年4月14日 23時) (レス) id: 201e0a3aec (このIDを非表示/違反報告)
柚 - はじめまして!とても作品が面白かったので、今までで1番読み入ってしまいました!出来れば小説としてお金を払って読みたいぐらいです笑お話の細かい所まで考えられていて本当に凄いと思います..!作品を作るのは大変だと思いますがこれからも楽しみにして応援してます (2022年4月13日 23時) (レス) @page47 id: 05cc864757 (このIDを非表示/違反報告)
0000(プロフ) - ゆゆさん» ご指摘していただいた上に、このお話へのお褒めの言葉とお気遣い、本当にありがとうございます🙇♀️!歌姫先生の年齢は完全に私のミスですので、修正いたします。大変失礼いたしました。 (2022年4月4日 0時) (レス) id: da97561712 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ - ↓作者様にお願いがあるのですが,下のコメントを見た後は「ゆゆ」と言う名前でコメントされている二つのコメントを消して欲しいです。このような神作にこんなコメントを残したくありませんので,よろしくお願いします! (2022年4月3日 22時) (レス) id: 05967b49de (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:。 | 作成日時:2022年2月14日 21時