そばに居るから。 2 (ページ9)

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side涼太

ガチャ

男「へぇ、まぁまぁ顔は整ってんだ、」

母「それなりにはね、」

深夜の1時頃、開いたドアから顔を出したお母さんと男の人。

お母さんは、僕のお母さんだ。
だけど隣の男の人を、僕は知らない。
お父さんじゃない。

じゃあ、誰？

涼「…だれ、」

母「お父さんよ。お父さんって呼びなさい」

僕の目をじっと見てそう言ったお母さん。

涼「違う…お父さんは、お父さんじゃん…」

母「涼太っ！お父さんだって言ってるでしょう！どうしてこんなに物分りの悪い子になったの！」

バチンｯ！

左の頬が、ジンジンと痛む。

痛い、痛いよ、お母さん。

こんなお母さん、僕は知らないよ？

いや、知っている。

僕がテストで100点を取らなかった時。

ご飯の時間じゃない時に、空腹を訴えた時。

少し家に帰るのが遅くなった時。

明るい部屋へと、行きたがった時。

そんな時に、"今のお母さん" が現れる。

僕の知らないお母さんになるんだ。

叩かれた頬は痛むけど、それを訴えることは出来ない。

有無を言わせぬ、高圧的な目が僕を捉えている。

涼「お、とう、さん、」

こうなれば、もう従うしかない。

男「いい子だね」

そう言って笑う男を、僕は気持ちが悪いと思った。

だって次の日にお父さんだよって紹介される男の人は、また昨日とは別の男の人なんだから。

僕の "お父さん" は何人いるのだろう。

バチンｯ！

ボコｯ！

ドスッ…ドスッ…

ガンッ…

『いいねぇ、その目』

『もっと睨めよ、俺を憎めよっ！もっと、もっと…悔しそうにしろよっ！』

『ストレス発散にちょうどいいわ』

『なぁ、俺が憎いか？』

『ははっ、お母さんは助けてなんかくれねぇよ？』

違う男の人なのに、どうしてだろう。

どうして同じ事をするのだろう。

僕に対して暴力を振って、暴言を吐いて。

涼「はぁっ、はぁっ、っん、くっ、っぁ、」

今日もまた、殴られて、蹴られて。

涼「っあ…けほっけほっ、カハッ…」

床が赤く染まる。

血を吐くのは、何十回、何百回目なんだろう。