NPO－なにわ男子－ (ページ34)

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「A…」

まだ午前中の柔らかい日差しの元、チェアに座ってどこか遠くを見ているような。

あまりにも無防備な表情の彼女に、完全に気を抜いていた。

「…え、？」

「…あぁ、ごめんなさい。
Aさん、で合ってます？」

「はい。…あなたは？」

「えっと、…ソーシャルワーカーの者です。
丈って呼んでください。あ、」

あ、と思った時にはもう遅い。
彼女はその名を口にしていた。

「じょう、さん。」

「あの、えっとはい。…漢字は城って書いてじょう。
珍しい苗字なんですよね〜…」

へぇ、と言った彼女を見ると、上手くごまかせたようだ。

「会社からですか？…それとも行政？」

「え？」

「じょうさんに、こんな仕事を与えた人。」

黙った俺を見て、「ご迷惑かけてごめんなさい。」と言った彼女。

「…僕の仕事は、あなたが生活しやすいようにお手伝いすることです。
だから、」

「え？」

「我慢、しなくていいんですよ。」

散々お世話されてきた俺が、まさかAにこんなこと言うなんて。
あいつの役に立つことができるんかな。

そう思いながらも、合わせた瞳は、微かに揺れていた。

Aは、ここ1年ほど仕事を休みがちになってたようだ。
病名は強いて言うなら、適応障害とかいうそんな感じやった。

「別に、休みたくて休んでる訳じゃなくて…
明日は行こう、そう思ってしっかり準備して布団に入るんです。でも、」

「でも、？」

「夜、どうしても眠れない。」

そう言った彼女の顔は、いままでほとんど見たことがなかったくらい、弱気で不安でいっぱいっていう感じで。

「だから、こうやって昼間出掛けてるんですね。」

「はい。散歩して、日光を浴びると、疲れるし体内時計がだいぶ戻るって聞いたんで。」

「それはいいことです。
そうやって何事もチャレンジしていくことは、Aさんのいい所ですね。」

これまで俯き気味だった顔を、少しであるがあげた彼女。

不意にその頬に手を伸ばしてしまいそうになって、慌てて右手を反対の手で抑えた。