NPO－なにわ男子－ (ページ32)

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・-Joichiro- ページ32

「なんや、末澤か？
大吾なら今日は空けてる。」

そう言ったのに、返事のない事に違和感を抱き、作業の手を止めて振り向いた見た末澤の顔は、今まで見た中で一二を争うほど真面目で。

「今日用があるんはお前や、丈。」

「…なに？」

「俺が何言いたいか、わからんとは言わせへんぞ。」

こういうとこにやけに鋭いところが、こいつのいいとこであり、俺にとっては不便な点でもある。

「だからなにって、」

シラを切って、白状する気のない俺に、いつもなら諦めるこいつも、今回ばかりはそうはしてくれんらしい。

作業中だったノートパソコンが置いてあるデスクに、音が響くほど勢いよく手を置いた。

「…あっちのやつに、自分の存在を知らせるのはタブー。
そして、俺らが色々詮索するのも、」

無理やり俺の顔を覗き込んできた末澤に目線を合わすことが出来ない。

「…ましてや思い出させるのも。」

不自然に目を逸らしたままの俺に痺れを切らした末澤は

「最終警告、やからな。」

とイライラして帰っていった。

先程から、新たに打ち込まれたところのない画面には、続きを書いてくれとカーソルだけがチカチカと点滅し俺を急かしていた。

「忘れるなんて、あるわけないやろ。」

力を入れて握った拳は、手のひらに爪がくい込んで痛い。

その痛みなんか、比にならないほど、喉の奥の方はキリキリと痛んだ。

かつて、あっちでの記憶がなくなっていた俺。

あの時、なんで思い出してしまったんやろ。

思い出さなくても、
人には知らなくてええ事もあるんや

なんて、今のあいつらには口が裂けても言えへん。