おねがい ページ25
医務室を抜け出してきたのが悪かったのだろうか。明らかに容態が悪化していた。自分の息遣いがうるさいのが分かる。
『あっつい………っ』
胸元の着物をぐいと引っ張るが、風も感じられない程肌の表面も熱を帯び、意味を成さなかった。
文｢おい、大丈夫か｣
この声…文次郎…
顔を上げないため足しか見えないが、前に立つのが彼だって、声で当たり前に分かる。
その瞬間身体が言うことを効かなくなった。
人が近くに居ることを知った途端、そこに行くことしか頭になくて、目の前に向かって身体を
文｢おまっ…何して…っ｣
そんな私を文次郎は受け止め、困惑する声が降りかかる。
問いに答えている余裕が無くて、自分の頼みだけを聞いてほしいという図々しさ。
取り込む酸素と吐き出す酸素の量が比例していない気がする。
『…っ…もんじ…っ』
文｢なﾞｯｯ｣
文次郎の目に映った彼女の目は涙で潤み、頬は露骨に赤く染まっていた。
口元は緩み、言葉も息も途切れ途切れなのが分かる。
『っくち…』
文｢は、は？｣
『口…吸い…したい……っ』
文｢はぁｯｯ……！？！？！？｣
身体が言うことを聞かない。
そんなこと言っていい筈ない。普段なら言う筈ない。
それなのに、今はどうしようもなく身体がそれを求めていた。
『おねがい…っ口、吸ってほしぃ…っ』
文｢ば、ばかたれ…！何を言い出すんだっ…！｣
文次郎の胸元の着物を握りしめ、背伸びする。
殆ど私が身体を預けてしまっているから言葉で私を追い返すも、手は私を支えるしかなかった。
変だって分かってる。でもだからこそ、こんな突拍子もないことをしてるって分かってるくせに、やめようとすることができないんだ。
文｢どうしたってんだ…っ｣
『おねがぃ、はやく…っ』
文｢そんな…っこと｣
こんなに欲しがってしまうのは訳がある…？
だったら従えば治るかもしれないとまで私は思い始めていたのかもしれない。
一方文次郎は前代未聞の焦燥に駆られていた。
このまま彼女に押されてしまえば、その後の自分の行動に責任を持てる自信が無かった。
しかしこれ程熱を帯びた彼女を前に、そろそろ何か切れてしまいそうでいた。
文次郎の理性が壊れるのが先か、双葉が我に戻るのが先か。それとも、誰か割って入るのが先か。
小｢いやー！久しぶりに長次と喧嘩したなぁ！………ん？｣
喧嘩帰りの小平太が見たのは、妙に顔を寄せる二人の姿。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 21人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ピーナッツ(プロフ) - 空さん» ピクリューで｢テイク式女メーカー｣と調べていただくと出てくると思います！ (3月17日 7時) (
レス) id: 721fcb8351 (このIDを非表示/違反報告)
空 - あの、主人公の女の子ってどのメーカーで作ったんですか？ (3月16日 18時) (レス) id: c61495b448 (このIDを非表示/違反報告)
ピーナッツ(プロフ) - 空さん» わわ、その通りです…！💦すぐに訂正いたしました。ご指摘いただきありがとうございます🙇♀️ (2月25日 8時) (レス) id: 721fcb8351 (このIDを非表示/違反報告)
空 - この作品"１５"ではないんですか？ (2月24日 19時) (レス) id: c61495b448 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ピーナッツ | 作成日時：2024年2月21日 6時
