【忍たま】ちょっと夢見てきます。14 (ページ9)

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赤ページ9

鋭い刃が鈍い音を内で響かせ、肉に吸い込まれる感覚。初めての感触。
奥に力いっぱい押し込めば、何かが切れたように本体が倒れた。

倒れ伏していく仲間を見て、怒りに任せただけの腕が私目掛けて飛んでくる。

忍｢なにっ！？｣

ﾄﾞｽｯ…ｯ

苦無を掲げてきた腕を掴み、胸部を狙う。

この人も、一瞬だった。

忍｢ｶﾞｯｯっ…！！！｣

渾身の蹴りを腹の急所に吸収させ、ぐらついたところに苦無を突き立てる。

只目の前に躍り出てくるのを一人ずつ、無心で消していくだけだった。

何故無心なのか。

私にもよく分からない。

でもこうしないと私の中で何かが、誰かが、私を止めようとしてくるものから逃げることができなかった。

忍｢やめろ…っ｣

ゆっくりと歩み寄れば、覚束無い足取りで私から後退る。

前に構える苦無を持つ手も頼りなく震えていた。私に向けている筈が、刃は私を捉えていない。

顔は酷く怯えていた。

どんどん少なくなっていき最後となったこの人の表情に、今まで止めることが無かったこの手を、一瞬提げそうに硬直した。

そんな目で見ないで＿＿＿

思っている矢先、気付けば携える苦無だけでなく赤い忍装束も真新しい更に濃い赤で塗られていた。

その途端何故か戸惑いが消え、其の色を見下ろしても特に何も思わなかった。

仲間がまさか私みたいな者に倒されたこと。
自分一人だけ残ってしまったこと。
勝ち目が無いこと。

今にも腰が抜けそうで、それ等で彼の顔は歪んでいた。

敵なのに、どうして。

何故迷う必要がある。

何かに対抗するもう一人の自分を押し退け、私は真っ直ぐに貫き通した。

相手の刃は徒労に過ぎず、役に立たないまま男の手をすり抜ける。

声が消え、二つあった呼吸は一つになる。聞こえるのは少し乱れた私の呼吸音だけだった。

緑の地面に散った赤黒い液体。

私がやった。私が塗った。

此処に倒れている人全員、私の手で…

忍務をやり遂げた達成感で溢れる筈なのに、何故か自分を責めたくなるのはどうしてだろう。

さっきから、

邪魔。

八方斎様の声に急いで気持ちを切り替える。

『仰せの通り、全員を始末しました』

八方斎｢うむ。見ていたぞ。よくやった｣

八方斎｢…？どうかしたのか？｣

『え？』

私を見て首を傾げる。

八方斎｢どこか悲しそうに見えるが？｣

『え、そう…でしょうか？私には今達成感しかない筈ですが…？』

嘘……なんて、ついていない。