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『はい…』

八方斎「そういう奴を野放しにはできないだろう?勝手な事はさせられん」


八方斎様のお言葉が、一つ一つ確実に私の身体に染み込んでいく。私はそれを、素直に丁寧に吸収した。


八方斎「この世は勝つか負けるかなのだ。そして忍者は"生きる"か"死ぬ"か」

『生きるか、死ぬか』


自分自身に教える為に、言葉を繰り返す。


八方斎「そうだ。殺されても可哀想は無い。仕方の無い事なのだ。時には情けを捨てることも必要だ。優しいだけでは生きられない。分かるか?」

『はい』

八方斎「よぉく聞きなさい。我々の邪魔をする者は全員敵だと思いなさい。どうして彼らは正義を邪魔するのか」

『彼らは悪い奴だからです』

八方斎「悪い奴らをそのままにしておくとどうなる?」

『世の中が危険にさらされ、人々が苦しみます』

八方斎「ならそうならないように、鈴音A。お前はどうする?」

『……悪い奴らを...討ち取ります』

八方斎「お前の言う通りだ。生かしてはおけないのだよ」

『はい』

八方斎「偉い!それでこそドクタケ忍者だ。怒鳴って悪かったな」


明るい笑顔を作り、私の頭をぽんと撫でた。


『ありがとうございます』


褒められたのは嬉しい。

でも、やっぱり何かが引っかかる。

人を殺すということを決心できていない気がする。

確かに悪い人を放っておくわけにはいかない。けど、
人を殺めると思うと、今苦無を握る手が震えて仕方ない。八方斎様を悲しませたくなくて、その手を背中に隠した。

きりきりと胸が痛む。


八方斎「お前の性格は……うぅん…」

『え、、私の性格、どこか悪いのですか………?』


悪いと言われたかのように、ドスッと突き刺さり眉を潜めた。


八方斎「あぁ、違うのだよ安心せい。まだ敵すらを傷付けることにも抵抗があるようだからな」

『すみません…』


忍者に不向きなのかな…なんて自分を責めてしまう。


八方斎「謝らなくていい。人としては素晴らしいことだ。だがな、人が良すぎても上手くはやっていけんぞ」


"優しいだけじゃ生きられない"

先の八方斎様の言葉を思い出した。

褒めながら忠告してくれる為、前を向いて聞いていられる。


八方斎「変に聞こえるだろうが、自信を持っていきなさい」

『自信を?』

八方斎「ただ人を殺すと思って武器を振ると、まだ苦しいかもしれん。だが正義が勝つと思えば多少は軽くなるだろう」


あぁ、八方斎様のお話は本当に為になることばかり。簡単に頷くことができた。

刃→←邪



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作者名:ピーナッツ | 作成日時:2023年11月20日 7時

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