濁し ページ50
文「A、何処か行くのか?」
『え、あぁ、うん、ちょっと町に』
文「買い物か?一人で?」
『そんなところ』
誰にも見つからずに行けるとは思ってはいなかったが、できれば見つからずに行きたかった。
文「一人じゃ危ないぞ。俺が着いていく」
『大丈夫大丈夫…!あ、一人じゃないから!じゃあ私もう行くね!』
まだ少し引き止めようとする文次郎とすれ違い、小松田さんに断って門を抜けた。
・
『まだ来てないのかな』
利「Aくん」
『わ!?なんで隠れてたんですか?』
利「できれば誰にも見つかりたくなくて」
『私も本当はそうしたかったんですけど』
利「本当はってことは気付かれちゃったのかい?」
『はい…文次郎に』
落ち込むが利吉さんは問題無さそうで居た。
利「あの六年生の目を掻い潜るのは確かに難しそうだな。まぁでも黙って出て行って後であれこれ言われるよりはいいんじゃないか?」
『確かに、言われてみれば見つかって返って良かったかもしれないです』
利吉さんが仰る通り、無断で出たら六年生が血眼になって探しに来るかもしれないし、無事に帰ってもお説教を食らう羽目になっていたかもしれない。
利吉さんには言わなかったけど、既にあの時から文次郎の機嫌はあまり良くなかった気がする。素っ気なくしちゃったし。
利「それじゃあ行こうか」
『はい』
利「Aくんの制服以外の着物は初めて見たな」
『そう言えばそうでしたね。お屋敷に行くのに変ではないでしょうか…』
利「勿論。とてもよく似合っているよ」
『あ、ありがとうございます…!』
これから任務だと言うのに、私たちの会話からは誰もそんなこと予想しないだろう。
・
文「一人じゃないって、誰と行くってんだよ…それも黙って行こうとしてやがったし」
仙「どうした文次郎。そんなところに突っ立って」
Aの言った通り文次郎の機嫌は曲がっていて、腑に落ちずに居た。
文「Aのやつ、一人で町に行った」
仙「なに?町に?それも一人で??」
文「いや…正確に言えば一人ではないらしいのだが。誰とまで教えてくれなかった。何となく濁しているように思えた」
仙「使いなら私たちに言うだろうしな…気になるな」
彼女の身を案じての不安があるからだが、一番は相手が誰で、町に何しに言ったのか気になるからだった。
い組の二人で行くつもりが、厄介にも他二組にもバレてしまった。
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作者名:ピーナッツ | 作成日時:2023年11月20日 7時