妻役 ページ48
この任務はもう既に始まっていると仰った。
敵対する城からも同様の任務を受け、利吉さんが屋敷を訪れることを屋敷の主人はもう知っている。
ある計画の話をするのに屋敷へ行き、話を進めるのだがそれは嘘で、そこで聞き出して得た情報を、本命である最初任務を受けた城へ持っていくのだと説明された。
つまり、敵の城の任務を受けたと見せかけ、本命の城の任務を遂行するということだ。
『でも、何故その任務に私が必要なのですか?』
利「そのご主人なんだが、家庭を持つ男じゃないと信用できないと言うらしくてね。私が独り身じゃないことを信じてもらえないと話してもらえなさそうなんだ」
『変わった拘りをお持ちな方なんですね…というか偏見…?』
家庭を持っているなら信じられるなんて、何を根拠にしているのかさっぱり分からない。
家庭を持っていたって信じられない人は信じられないのに。頭の堅いお方だと直ぐに分かった。
『では私は娘にでもなればいいですか?』
利「はは!それだと流石に歳が近すぎるなぁ」
『あ、確かに…年齢を偽るのは難しそうですね』
利「ああ。だから私の妻として協力してくれないか」
そう来ると予想はしていたが、改めて利吉さんから聞こえると照れくさい。
利「どうかしたかい?」
『へ…あ、いえ…!なんか、その…慣れないなって思いまして、、』
私も言い方があれだったと、利吉さんは苦笑した。
利「私の妻のフリをして一緒に屋敷に行ってほしい。主人との話は私がする。もし何か聞かれても私の話に合わせてくれればそれでいいから。私もAくんの話に合わせるよ」
最低限妻が居るということを信じ込ませられればいいと、確かに忍者経験が少なくても何とかなりそうな内容だった。
利「どうかな。無理にとは言わないけど…」
『…分かりました。引き受けます!せっかく来てくださったんですし、お手伝いさせてください!』
利「それは良かった。助かるよ」
安心したように利吉さんは笑顔を弾ませた。
不安が全く無くなったというわけではないが、ここまで説明もしてくださったので断ってしまったらなんだが申し訳ない。
『でもどうして私に?先にくノたまの子たちを先に視野に入れそうですが』
利「ん、あぁ、私が勝手にAくんと行くのが一番上手くいきそうだと思ってね」
『嬉しいですけど、何を根拠にされたのか気になりますね』
利「まぁ気にしないでくれ」
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作者名:ピーナッツ | 作成日時:2023年11月20日 7時