プロの頼み ページ47
山田｢利吉、何度も言っているだろう。帰りたくないのではなく、帰れないのだと｣
利｢いえ、今日は別の用をお願いしたく思いまして｣
山田｢別の用？｣
利｢はい。こんな言い方不躾ですが……鈴音Aくんをお借りできないかと｣
＿
利｢Aくん！｣
私を呼ぶ、凛とした爽やかな声に首を回す。
私のことをこんな風に呼ぶ人は、私は一人しか知らない。
『り、利吉さん…！』
手を軽く振って歩いてくる、そういつもお目にかかることのできない好青年に、私は身を固めてしまった。
利｢やぁ、久しぶりだね｣
『お久しぶりです！山田先生に御用ですか？』
利｢いや、違うんだ。今日は君にお願いがあってね｣
『え？私にですか？』
てっきり山田先生の洗濯物を取りに来たのか、もしくは奥様の待つ家に帰ってくれと申し上げにいらしたのかと思ったが、今日は違うみたいだ。
それも私に用事があるだなんて。
利｢実は、Aくんに私の任務の手伝いをしてほしいんだ｣
『え…！？私が利吉さんの任務のお手伝い！？』
私が大袈裟と思わせるくらい吃驚するのに対し、利吉さんは笑っていた。
利｢そんなに驚くことでもないと思うけど｣
『お、驚きますよ…！確かに私六年生として名が通っていますけど、ご存知の通り此処での学びは編入生の守一郎より浅い上に、一年生の実力にも等しくないんですよ…！？』
利｢それは勿論知ってるさ｣
『じゃあ、どうして…』
利吉さんはフリーの売れっ子忍者だ。そんな利吉さんのお手伝いだなんて、足を引っ張ってしまうのが目に見えている。
それも私が忍者経験が浅いこともご存知の上で頼むなんて、何を考えていらっしゃるのか検討もつかなかった。
利｢君じゃないと駄目なんだ｣
『わ、私じゃないと…ですか？』
益々理由が分からなくなってしまう。
手伝ってもらうのなら私なんかよりも優秀な他の六年生の方がいいと、言わなくても私がそう思っていることを利吉さんは見抜いているだろう。
『あ、あの、利吉さんの頼みなのでなるべく頷きたいのですが、お返事する前に内容をお聞きしてもいいですか…？』
流石にこれから手伝ってもらうかもしれない人に任務内容を教えてくれないことはないと思った。
私が聞くと、利吉さんは頷いた。
利｢城の名前は伏せさせてもらうけど、任務を受けた城と敵対する城と繋がりのある屋敷の主人から、情報を盗んできてほしいと言われてね｣
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作者名：ピーナッツ | 作成日時：2023年11月20日 7時
