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七人で歩く道は狭く感じた。

ずっと問いかける私を焦らし、笑う六年生。でも何時しか楽しげな話に丸め込まれ、いつの間にか私も笑顔を零していた。



人の声が大きくなり、一つ、また一つと増えていく。

其処に着いたとしても、一度忘れた私の疑問に拍車がかかっただけだった。


『町………?』


人々が行き交う此処は色付いた町。
可愛らしい着物を召しませ友達と歩く娘さん。簪を手に仲睦まじい二人。手を繋ぐ楽しそうな親子。

今まで何度も目にした町なのに、久しぶりの所為かその活気が眩しく見えた。


仙「文次郎が奢ってくれるらしいぞ」

『え?』

文「はぁっ!?そんなこと俺は言ってねぇぞ!!」

留「偶には気が利くじゃねぇか」

文「誰がお前になんぞ奢るか!!」


みんなの文次郎イジりが始まったが私だけ少し遅れてしまう。明らかに仙蔵が始めたことだ。


『あの…まだ此処に来た理由、聞いてないんだけど、どうして町に?』

仙「なに、偶には揃って美味いものを食べたり、買い物をしたりするのもいいと思ったんだ」


みんなは頷いて微笑んだ。

他に詳しいことは言わなかったけど、それもきっと私の為なんだ。なんとなく、背後にある訳は察していた。

きっとそうだと自分で納得するだけで、どれだけ嬉しかったか。みんなの優しさが私の心を優しく撫でた。


小「文次郎奢ってくれるのか!!」

文「なわけあるか!奢るとしてもAに限るからな。お前らは自腹で払えよ」

伊「ケチ」

文「大体なんで俺がお前らの分も払わにゃならんのだ」


彼らは冗談半分なのだろうけど、他人事のように私は口角が上がるのを袖で隠した。


『でも奢りなんていいよ』

文「俺がいいと言ってんだ。こういう時遠慮するな」


鬼の会計委員長に口を噤む。なんとなく素っ気ない文次郎の不器用な優しさが温かい。


留「俺も何か買ってやろう。色々見ていこうな」

『え、』

伊「髪飾りがいいかな?僕も何かあげたいな」

長「可愛らしいものがいいか」

小「一つじゃなくてもいいぞ!」

仙「何が欲しい?」


みんなの善意の圧に負けそうだ。


本気で私を楽しませようと、喜ばせようとしてくれている。態々町にまで連れ出してくれて、私は胸がいっぱいだった。


『私、私は』










『時間が欲しいな』








私の言葉に六人は同じ一声を出した。

想→←察



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作者名:ピーナッツ | 作成日時:2023年11月20日 7時

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