誇 ページ5
私が濡れた着物を着ているのは、火事の中に居たのを助けようと咄嗟に水をかけたからだと謝っていた。謝罪だなんて、私には感謝しかないのに。
どうやって恩を返せば。
『私、絶対強くなって八方斎さんのお役に立てるように頑張ります！』
八方斎｢そう言ってもらえて良かった。期待しているぞ｣
私は大きな返事をした。
強くなるんだ。なってみせる。
忍術学園を、討つ為に。
・
其の日から私の特訓が始まった。
帰る所の無い私を、お殿様の木野小次郎竹高様も勿論だと承諾してお城に置いてくださった。
ドクタケ忍者の皆さんや、足軽さんたちも私に良くして下さって、本当に居心地の良い場所だ。
八方斎｢A。お前、どうしてそんなに強いんだ…？｣
『どうしてでしょう？私にも分かりません、でも、身体が勝手に動くんです！』
雨｢一本！｣
お城の塀に囲まれた中での特訓。
風鬼さんとの手合わせで風鬼さんが私の苦無によって苦無を手放し、私が一本を取った。
八方斎様が言うには私は飲み込みが早いらしくて驚くようだ。
此処に来てまだ二日目。自分で言うのもなんだが、私って結構戦えるのだろうか？
新しく頂いたドクタケの赤い装束が、日光に照らされて眩しい。ドクタケ忍者の一員だということを誇りに思わせてくれているような気がして嬉しくて仕方ないのだ。
霜｢八方斎様｣
八方斎｢どうした霜鬼｣
霜｢あの娘、凄い腕じゃないですか？あんなに強いなんて聞きましたっけ？｣
八方斎｢いいや聞いたことない。だから儂も驚いている｣
明らかに高い実力。それはドクタケ城での特訓の成果ではない。
まるで、"元々強かった"ようだったのだ。
身のこなし、武器捌き、体力。
全てが全て、まるで別人のようだった。
八方斎の命令で、Aと手合わせをしたドクタケ忍者は全員敗北。いとも簡単に全員から勝利を手にしたのだ。
どうしてこんなにも変わったのか。
誰も知る由もない。
八方斎｢A｣
八方斎様が私を呼ぶ。
私はすぐさま駆け寄った。
八方斎｢見事だ。前からあんなに強かったのか？｣
『いえ…そもそも記憶がありませんので…正直自分がどう動いているのかも…そんなに力が備わっていますか？』
八方斎｢そりゃあ強い。何しろ全員に勝ってしまったんだからな。一番強いと言っても過言じゃないぞ｣
『いえそんな、でも八方斎様に言われると自信を持ってしまいます』
八方斎｢良いことではないか。お前を誇りに思おう！｣
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 33人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ピーナッツ | 作成日時：2023年11月20日 7時
