赦 ページ40
正直、気まずかった。
心配してくださって、私の言いたいことを聞きに来てくださったのだ。
いつの間にか顔を上げられなくなっていた。
私の悩みは酷い話だから。
『申し訳ありませんでした。……他に、何と申し上げればいいのか分かりません…』
昼間放った私の散々で無礼な言動に、どう謝ればいいのか分からなかった。
そんな私に首を振る。そして微笑んでまでくださったのだ。
山田「何を言うか。お前が謝ることは無い」
土井「あいつらも言っていただろう」
そして六年生たちと同じお言葉をかけてくださった。
あんなことがあったのに、失礼極まりない発言をしたのに、微塵も私を叱らない。
『山田先生…土井先生………』
『わたしは』
長い間が空いた。やはり簡単に言えることではなく、恐れで侵食されているよう。二人の先生からは少なくともそう見えた。
優しいお言葉を頂いても、私の中に消えないものがある。
ごめんなさい。
せっかくの優しいお言葉。気にするなと言ってくださることにとても感謝します。
でも、簡単に受け取れそうにありません。
だって私は
『人を殺してしまいました』
一瞬息が止まる。
Aの声がぷつりと切れ、露骨な震えが顕になっていた。
自責の念に苛まれ、其の身体は小さく見える。
まるで死ぬ間際のような恐怖感が、滔々と押し寄せる。
一つ二つで済まされない幾つもの命を亡きものにし、平気で此処に還るまで生きて。自分がしたことが恐ろしくて仕方がない。
自分には生きる資格が無いとまで思った。
『どうすればいいですか………なんて…聞く資格すら無い、ですね』
『言い訳なんてしないです。私がやりました…私が自分でやったんです。全部、私が悪いんです』
涙を噛み殺し、もう泣きたくなかった。泣いて許されることじゃないから。
私は此処に居るべきじゃない。
此処には居られない。
みんなを裏切るわけじゃないけれど、穢れた私はあの笑顔に
許してくださいと言うつもりもありません
でも私はそれを口に出して言うことができなかった。
図々しい。本当は何処かで許しを欲しがっているんだと、唇を噛んだ。
土井「A、お前の気持ちはよく分かってる。自分の罪を重く感じて辛いだろう。でもな、私たちの方で許すも許さないも言わないよ」
『……どういうことですか…?』
土井先生は悲しそうに微笑んだ。
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作者名:ピーナッツ | 作成日時:2023年11月20日 7時