悶 ページ39
その夜。私は自室の布団で天井を眺めていた。
薄く月明かりが、白い障子を浮かび上がらせる。
満月だろうか。お陰で外は明るいだろうか。
それなのに私の部屋は、私の心はこんなにも暗く、湿っている。
本当にこれで終わったのだろうか…?
このまま大団円を迎えてしまっていいのだろうか…?
馴染みのある布団に身体を寝かせても、ちっとも眠気が寄ってこなかった。寝返りを打っても身体が休まらない。
私の目は、きっと浜に打ち上げられた魚のように光を持たず、生を感じられないだろう。
むくりと身体を起こす。
腑に落ちなかった。
みんなと居るとあんなに笑えて、今までのことを本当は夢だったのではないかと思ってしまう。
しかし此処に居ればきっと忘れられると期待しても、やはり一度重く感じた責任は消すことができなかった。
「A」
思わず瞬きを一つ、顔を上げる。
姿が見えないのに関わらず、自分の名前を呼ぶ声が聞こえた。
見ると障子には影が二つ程、月の光によってぼんやりと浮かび上がっている。
閑静で優しさを感じる、でも真剣な声色。
間を空けて「はい」と返せば、白い光の一筋が、暗い部屋に射し込んで広がった。
山田「やはり眠れないか」
『山田先生、土井先生、』
土井「お前のことだ。色々煩悶してしまっていると思ったんだよ」
本当に今、夜中で申し訳ないとも思ったが、山田先生と土井先生のお部屋に伺おうと思っていた為、まだ驚きが静まらない。
山田「帰ってきてどうだ?少しは気持ちが楽になったか?」
『……はい。昼間本当に嬉しくて楽しくて。私の居場所を残しておいてくださった先生やみんなには、感謝を言い切ることができません』
布団を端へ、部屋に入っていただき背中に芯を入れる。
山田先生と土井先生の表情が、後ろからの逆光で読み取りずらい。晴れない気持ちもあって、私の顔は光が当たっても曇って見えただろう。
その通り、正面から月光を浴びるAの顔は、先生二人には寂しそうに見えた。微笑んでいるようでも、それは純粋に感じられなかった。
山田「本当に、それだけならいいのだが」
その一言だけで先生は何も付け加なかった。
心配するような面持ちで、きっと私が思うことはそれだけじゃないってことをご存知でいらっしゃる。
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作者名:ピーナッツ | 作成日時:2023年11月20日 7時