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目を開けているのに、一瞬何も見えなくなったような気がした。


信じられなかった。


目が離せない。…何を仰っているのだろう。


山田「隠さず言え。分かるように」

『八方斎様、嘘ですよね。私を助けてくださったのに騙すなんてそんなこと、ないですよね』


固い笑顔で歩み寄った。

気疎く視線を泳がせる八方斎に、山田先生は更に刃を寄らせる。


八方斎「お前を悪用したのだ。コイツらはお前を傷付けられない、そう知っていたからお前を前線に戦わせた」

八方斎「お前は………忍術学園の生徒だ。その周りに居る奴らは皆お前と同級だ」

山田「A。今お前さんが着ている制服と、周りの六年生の制服、もう一度よく見比べてみなさい」


徐に振り向いた。

彼らが纏う深緑の装束。
さっき彼らが言っていたことを思い出す。


本当に、私の着物と同じだと言うのか。


私は口を開いたまま、声が出なかった。

悲しそう。悔しそう。
そんな表情に歪んだ八方斎様を下から見つめる。


信じたくない。それだけだ。

有り得なかった。今までずっと優しかったあの人が、私を騙していたなんて、本当の私の居場所は忍術学園(ここ)だって。

今まで敵としていた学園を、いきなり本当の居場所と伝えられて、「そうですか」なんて言えるわけがない。


山田「本当だA。聞いたろう、八方斎の本音を」


あの教師が無理矢理言わせたと思った。
でも、無理だった。

認めたくないが、そんな風には見えなかったから。


『両親を亡くして、その所為で、私は』


どうしても言い訳を作りたかった。


八方斎「違う……お前は川に落ち、溺れ、そして記憶を失った。偶然川下に居た我々がお前を引き上げたのだ」


同じだ。六年生が言っていたことと。

私は川に落ち、溺れて記憶を失った。そう彼らも言っていた。


『でも……忍術学園は世を乱す…』

山田「この学園は忍者を育てる学校だ。真っ直ぐ夢に向かう子供たちを育てる学校だ」

土井「この学園で育った子供たちは立派な忍者として、人として、世に出ている」


もし、それが本当なら、私はそんな学園を恨んでいたのか…?

実際に見たことも無いくせして。


そういえば、私は確信させてくれるものを見せてもらっていなかった。口頭だけの噂を聞いて、疑いもせず信じてしまった。


『じゃあ……』



本当に全部嘘……?



脱力して、まるで穴に落ちるように身体が沈む。

独→←惑



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作者名:ピーナッツ | 作成日時:2023年11月20日 7時

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