名 ページ26
私は自分を落ち着かせるために振り返った。
『こへいたが跳んで思いっきりボールを打つの。とめさぶろうともんじろうがいつも怒ってた…せんぞうは呆れるし、いさくは救急箱を持ってて、ちょうじも、乗り気で』
瞬きをした後、ふと私は顔を顰めた。
『私、』
変なことを言った気がして、答える筈ないのに自分で自分に問い掛けた。
長「今お前が口にした名は誰のものだ」
『………………………………わからない』
留「ドクタケに居るのか……そんな奴ら…!」
ドクタケ忍者の皆さんの顔を思い出す。
違う。
あの人も違う。
あの人の名前は………違う、
この人も違う。
誰、誰なの、私は今なんて言った?どんな名前を口にした…?
『だれ………?』
目をあちこちに泳がせるAを前に、
六年生は己の名を叫んだ。
潮江文次郎____
立花仙蔵____
七松小平太____
中在家長次____
善法寺伊作____
食満留三郎____
『…………それが…………あなたたちの…名前…?』
何故か身体中に鳥肌が走った。
何処かで聞いたことあるような…そんな気がした。
あれ…でも、さっきから言っていたっけ…どうして今になって首を傾げるようになってしまったのだろう…
妙に名前が頭に張り付いて離れない。
動揺と混乱、焦りに襲われ蹌踉めくA。
其の様子を八方斎が黙っていることはない。
八方斎「やめんかっ!!」
嫌な予感を感じていた。彼女の様子から押し寄せる多大な不安。
八方斎が叫ぶ。
このままではまずい、予想外にも記憶を取り戻してしまう。と焦燥に駆られていた。
思い出してしまえば今まで培った全てが無駄になる。掴んだ好機を逃してしまう。
一度失くした記憶は戻らないと思っていた。しかしその思い込みが今、彼らによって壊されようとしていた。
対して六年生は、少しずつ記憶が戻りつつあるAに希望が見え始めた。
『…誰…だっけ……………』
伊「さっきお前が話していたのは僕たちなんだ!!自分でも言っていただろう…!」
八方斎「黙らんか小僧共が!!!儂の計画を台無しにする気かっ!!!」
仙「信じろA。私たちだ。お前をよく知っている。しつこく言うのは、それだけお前が大切だからだ」
息が荒くなっていく。苦しい。
静かな声に勝手に耳を傾けてしまう。
その言葉が、まるで私に手を差し伸ばしているように思えた。
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作者名:ピーナッツ | 作成日時:2023年11月20日 7時