敢 ページ16
伊｢A！！僕たちのこと本当に忘れちゃったの！？｣
留｢Aっっ！！頼むから返事してくれよ！！！｣
八方斎｢はっはっはっ！！無駄だ。其の声が届くことはない。彼女はもう忍術学園六年生ではない、ドクタケ忍者。そう、儂のものだ｣
辺りには六年生の叫びと、八方斎の笑い声が響く。
風｢八方斎〜もういいでしょー？もうやってもらいましょうよ｣
調子に乗った八方斎を、外からドクタケ忍者たちが呼び戻した。
八方斎｢ああそうだな｣
肩を叩かれ、耳栓を外した。
正直何があったか気になるが、八方斎様に従うだけだ。
八方斎｢ではA頼んだぞ。儂らは見守っているからな｣
『お任せを』
そして私は彼らに向き直る。
『私が相手になる』
再び苦無を構え、ついに音も無く足を地に着けた。
六年｢Aっ！！！｣
すると彼らは私に突進してきたのだ。
避けようとも思ったが、其方から来てくれるのは好都合。私が動く手間が多少省ける。
少し距離が縮んだところで此方も動いた。
小｢な…ｯ！？｣
一番速く接近した彼に刃を向けたが、間一髪のところで避けられた。
掠りもせず、歯を噛み合わせる。
小｢A……嘘だろ…？｣
何をそんなに驚いたのか、一歩後ろに下がったところで棒立ちになっていた。
他の五人も後ろで同じく立ち竦んでいる。
女の私だから武器を交えることすら無駄だとでも思っていたのだろうか？
馬鹿にして…
仙｢お前……正気か…？｣
『私は最初から正気。馬鹿にしないで』
伊｢A……A…｣
そんな時、放心しかけている彼がよろっと近付く。
なんか気弱そうだし、最初は彼から…
＿＿ｷﾝｯ
留｢っ伊作、今は耐えてくれ…っ｣
しかしもう一人に止められた。
武器は……二本の鍛鉄からできたヌンチャク。私の苦無はそれによって止められた。
『もう少しだったのに』
留｢(なんて力だ…っ長次が言ったようにAじゃないみてぇだ…)｣
信じたくないが、伊作に攻撃を仕掛けようとしたAの苦無を止め、嫌でも確信した。
今のあいつは、AだがAではない。
まるで誰かに操られているかのような、本人のものでないような力が、鉄双節棍を通じて伝わってくる。
偽物だ。本物は無事だ。
誰か、そう言ってくれ。
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作者名：ピーナッツ | 作成日時：2023年11月20日 7時
