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八方斎「記憶!?…が、無い……?」

木野「うむ。溺れた衝撃で記憶が失われた…と考えると?」

八方斎「まさか……」


八方斎は改めてAの前に座り、真剣な顔付きで問い掛けた。


八方斎「自分の名前は?」

『鈴音Aです』

八方斎「やっぱり記憶喪失じゃないですよぉ!」

木野「続けるのじゃ」

八方斎「では……忍術学園を知っているか?」


名前ははっきり言えたが、其の質問をした途端、顔に変化ができる。


『にんじゅつがくえん…?……ごめんなさい、分かりません…』

八方斎「本当か?儂らを揶揄ってるんじゃないか?」

『揶揄う…?初対面の方にそんな失礼なことできません…』


忍術学園を知らない、初耳だと言い張ったのだ。

八方斎も初めは記憶喪失のフリをして逃げるつもりではないのかと思っていた。

しかし真剣且つ、本当に何も知らなそうな瞳に、八方斎は眉を寄せた。

他にも忍たまのことや先生たちについて聞くが、どれも知らない。分からない、の一点張り。
そんな様子に八方斎は驚きながらも笑みを浮かべていた。


八方斎「殿が仰る通り、記憶喪失かと思われます」

木野「何故そんな嬉しそうにしておる。性格悪いのぅ」

八方斎「ドクタケにとっては褒め言葉です」

八方斎「鈴音Aを人質にするだけでも我々にとって有利なことですが、記憶喪失となれば更にこちらに勝利が近付きます」

木野「どういうことじゃ」


これ程無い悪巧みの顔を作りあげると、自信満々に即興で思いついた計画を打ち明けた。


八方斎「記憶喪失であれば幼子と同じこと。忍術学園の記憶が無くなったのであれば、忍術学園を悪いように言い、教え込ませるのです」

八方斎「そうすれば鈴音Aは忍術学園を悪玉と信じ、我々ドクタケを味方だと思い込むでしょう」


忍術学園の記憶を失くしたことを逆手に取り、記憶を新たに作り変えるというのが八方斎の陰謀だった。


八方斎「あの娘を味方につけるのです。そして彼女を使い、忍術学園に攻め入ります。奴ら、まさか彼女を傷付けるなど不可能でしょう」


木野小次郎竹高は少し考え、にやりと口角を上げた。


八方斎「ほら、よく言うでしょう?幼い頃の環境が、将来に大きく影響すると」

木野「そうじゃの。八方斎、其方の計画気に入ったぞ」


不思議そうに首を傾げるAの前で二人は顔を見合わせ、怪しげな笑い声を部屋中に響かせた。

教→←憶



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作者名:ピーナッツ | 作成日時:2023年11月20日 7時

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