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瞼が痙攣し、重々しく長い睫毛が上がる。


八方斎「お目覚めかな?」

『……………こ、…こは……………………』

木野「八方斎、目が覚めたのか?」

八方斎「はい殿、意識が戻ったようです」


Aは布団から身体を起こす。
少し辛そうに頭を抱えながら、ゆっくりと部屋を見渡した。


『ここは……』

木野「此処はドクタケ城じゃ」

『どくたけ…じょう……?』

八方斎「お前は川で溺れ、儂らの手で助けられた」

『川で…溺れた…………わ、たし……が?』


状況が上手く分からず、頭の回転が鈍くなっていた。
二人の顔を何度も見比べるが、その表情は不安よりも理解できていないような色に染まっている。


木野「安心せい。其方を傷付けたりはせん」

八方斎「た〜だ。お前には人質になってもらう。忍術学園を討つ為の人質としてな」


八方斎「おい、聞いてるのか?」


Aは二人を視界に入れながら口を閉ざしたままでいた。そして相も変わらず其の表情からはなんの感情も感じ取れない。


『あなたたちは…………』


『だれ……?』


『ここは………?あなたたちは…だれ?』

八方斎「だからぁ、此処はドクタケ城で、儂は稗田八方斎。で、其方にいらっしゃるのが城主の木野小次郎竹高様だ」


そう説明しても首を傾げるばかりだった。


八方斎「まったく、物覚えが悪いな?儂とお前は初対面ではないだろう。忘れたとは言わせんぞ?」


座ったまま動かないAに、八方斎が歩み寄る。


『………だれ…ですか……?……私…どうして……』

八方斎「変だな。ここまで言っても分からないとは。殿」

木野「ふむ…この娘がここまで冷静に儂らを欺いているとは思えん」


変わらなかった表情は徐々に雲を作り始め、不安を感じているようだった。八方斎はそんな姿に疑問を持ち始める。


八方斎「儂らはお前を人質に、忍術学園を攻めると言ってるんだ。忍術学園はお前が捕まってると言えば慌てるだろう?それを使うのだ」

『にん……?攻める……?』


知っている筈の八方斎を目にしても、「知らない」「分からない」と言うばかり。溜まっていく不安と恐怖に、Aの目に涙が滲み始めた。


木野「八方斎」

八方斎「はい、殿?」


八方斎が溜め息を吐き、また強く言い聞かせようと思った時。木野小次郎竹高が呼ぶ。





木野「記憶を失ってるのではないか?」

失→



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作者名:ピーナッツ | 作成日時:2023年11月20日 7時

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