【水溜りボンド】透明な君。【カンタ】 (ページ14)

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13話ページ14

Aside

・

もう夜明けを迎えそうな時間。

かんたさんは私とのお話に付き合ってくれていたため、さっきやっと眠れた状態だ。

完全に家内は静まり返り、私がひとりでここにいた時のことを思い出してしまいそう。

思い出さないために見た、かんたさんの眠るベッド。

無防備な寝顔をこちらに向けていた。

こうやって人の寝顔を見つめるのは初めてかもしれない。

いや、記憶が無いだけ？

まぁいいか。

こうやって、寝息を立てているかんたさんを見れば見るほど罪な気がしてくる。

睫毛が長い。

柔らかそうな頬。

半開きになった口。

すべてが愛おしく感じてしまう。

それでも触れられないままの私の手は、何のためにあるのだろう？

幽霊に手は要らないと思う。

自分が幽霊だなんて認めたくはないんだけど。

いくら手を伸ばしてもすり抜けてゆくばかり。

頬を撫でようとすればベッドさえもすり抜けてしまう。

布団をかけてあげたくても布団にも触れられない。

私は何のためにここにいるんだろう？

この世に思い残すことなんてないのに、なぜかずっとここに留まっていた。

それは私の意思ではなく、どうしてもこの世から離れることが出来ないのだ。

かんたさんを見ているだけで、生きてていいなぁなんて思ってしまいそうなのに、この世にいたら私は狂ってしまうんじゃないかなんて思う。

私はどうするのが正解なのだろう？

私、実は生きてたりしないかな？

『かんたさん、』

目の前にいる彼の名を呼び、柔らかそうな髪に触れようとする。

でも、私の手は彼の頭をすり抜け見えなくなってしまう。

この感覚は、痛い、や、痒いなどじゃない不思議な感覚だった。

何度も経験したはずなのに、辛かった。

『…かんたさん』

こうやって返事がないうちに呼び続けていたら、かんたさんでさえ私のことが見えないのかと錯覚してしまう。

また独り…？と不安になる。

やっと話せる人ができたのに。

「んー…？Aちゃん、おいで～」

普段じゃ想像もつかないような甘い声で私をベッドに呼んだ。

寝ぼけて、キャラ崩壊してるよ。(笑)

手を開いて待つ彼がとても愛しかった。

触れたくて触れたくて堪らなかった。

抱きしめてあげたい。

撫でてあげたい。

そう思ってももう叶うことはないんだよ私。

『かんたさん、』

私はかんたさんの横に寝転がり、

顔を下に向ければ少しだけ泣いた。