【水溜りボンド】earnest

5話 ページ6

寛太side

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気がつけば朝になっていた。

隣にはまだ眠っているAさん。

無防備な寝顔をこちらに向けていた。


「Aさんお仕事は……」

『…んー、お仕事…？……え！！？仕事！！！！What's time is it!!?』


飛び起きたAさんは謎にいい発音で俺に問いた。

寝起きとは思えない目の開き方に笑みが零れる。


「まだ8時ですよ」

『…8時…？出社11時だから大丈夫っぽいなぁ…でも帰って準備しないとな』


のそのそとベッドから這い出て服の皺を伸ばすAさんがいつもより大人に見えた。

仕事は大変なんだろうな、と感じさせられた。


「服しわしわですよ、これ貸しますから」


ベッドの横に置いていたタンスからパーカーを1枚出して渡した。

さすがにしわしわな服で出歩くのは大人として恥だろうから。


『ありがとう寛太くん。じゃあ今度返すね』


そう言って着替え出すAさん。

俺は全然意識されていないんだな、と実感。

一応男なんだけどなぁ。

昔から会ったことがあったから？

昔から俺はあなたが好きなんですよ。

言えない気持ちを飲み込めば、俺はまたベッドに潜り込んだ。

左横にはまだ、Aさんの温もりが残っていた。

抱きしめたくて堪らなかった。

このまま手を伸ばして、抱きしめて、押し倒して……交わることができればどれだけ気が楽なのだろう。

小さい背中と膨らんだ胸を見ながら、俺は息を吐いた。


『じゃあ、私仕事行くね。ちゃんと大学行くんだよ？』

「分かってますよ、ありがとうございます」

『うん！行ってきます』


俺のパーカーを着た彼女は玄関を出て行った。

まだ、彼女の服についた香水の香りが部屋に漂っていた。

ビールや酎ハイの缶が部屋に溢れかえっていても、Aさんの匂いが俺の鼻についた。

ベッドに潜り込めば、より一層彼女の匂いがした。

まるで抱きしめているかのような気持ちになれた。

欲求を満たすかのようなこの行動が正解なのかは分からないけれど。

彼女の匂いに釣られ俺はベッドで1人果てた。

彼女と交わることを想像すればするだけ罪悪感に襲われた。

俺の腕の中で喘ぐ姿を想像すればするだけ、俺を奮い立たせた。

頭の中で、俺は彼女を抱き寄せた。

好きだよ、と伝えればキスをした。

それだけ。

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