13話 ページ14
富永side
・
『後輩にこんなこと言うことになるとは思ってなかったなぁ』
「なんか、すみません」
下を向いているから泣いているのかと思えば、クスクス笑っていた。
無理して笑う彼女が、何故かとても魅力的に感じられた。
儚げで、切なくて、壊したいと思ってしまったのだ。
『…きゃッ』
俺が押し倒せば、小さく悲鳴を上げたAさん。
俺も俺で何をしているか分かっていない。
彼女の睫毛は長く涙で濡れていた。
彼女の湿った唇が俺の名を呼んだ。
『…富永くん』
何となく、目を見れなかった。
彼女の瞳の奥の方が見えてしまいそうで怖かった。
怒っているのではないか、悲しんでいるのではないか。
そんなことを考えれば、目を合わせられなかった。
『…いいよ』
「…は?」
彼女は確かにいいよ、と言った。
『富永くんがいいならシようよ』
そう言って彼女は俺を逆に押し倒した。
俺の上に跨っているAさんは今、何を思っているのだろう。
そして俺のどこを見ているのだろう。
顔?それとも心?
『どうしたい?』
やけにニコニコして彼女は問う。
それほどまで面白いところがあるのだろうか。
俺が何か面白いことをしたのか。
「シたい…って言ったら?」
『応えるよ』
「やめとくって言ったら?」
『応えるよ』
微かに笑いながら俺の首筋をなぞった。
しなやかな指の動きが色っぽさを感じさせた。
その行動は、俺を壊すには充分な物だった。
「…Aさん」
『なーに、知義くん』
たまにふざけてする呼び方だった。
下の名前を呼ぶことはふざけているとき以外ない。
その光景に腹が立ち、押し倒し返した。
俺の下になる彼女は全く怖気づいておらず、真っ直ぐな目で俺を見つめていた。
『そんな怖い顔しないでよ』
余裕そうなその顔が俺をどんどん苛立たせた。
その場だけの感情で、俺は彼女と交わった。
事中、彼女はずっと涙を流していた。
理由は知らない。
考えたくもなかった。
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まのん(プロフ) - 夏花さん» 本当にありがとうございます;;;;R18フラグ立てましたがよければ続きもご覧下さい!カンタくんは可愛い生物だ! (2018年5月5日 4時) (レス) id: 240d3919d8 (このIDを非表示/違反報告)
夏花(プロフ) - 2度目のコメント失礼します。ドキドキしながら見ています。かんたくんのかわいさがとてもきゅんきゅんきます!次回も楽しみにしてます!!! (2018年5月5日 0時) (レス) id: 6bd655e2cc (このIDを非表示/違反報告)
まのん(プロフ) - 夏輝@抹茶オレさん» 大人っぽい彼らを描けていたら嬉しいなと思います!自分自身見たかったので(笑)もっともっと頑張ります!応援よろしくお願いします! (2018年4月30日 19時) (レス) id: 240d3919d8 (このIDを非表示/違反報告)
夏輝@抹茶オレ(プロフ) - はじめまして、いつも更新を楽しみにしています。他の水溜りボンドの小説とは違うちょっと大人テイストの小説、初めて見たのですがすぐに引き込まれました!新鮮でいいですね(^^)これからの展開が楽しみです! (2018年4月30日 19時) (レス) id: bad733541a (このIDを非表示/違反報告)
まのん(プロフ) - 夏花さん» 本当にありとがうございます;;;;自分の力になります!!earnestは皆さんあんまり好まれないかな...とか思ってたんですけど、夏花様のような方がいて下さって本当に助かります。ありがとうございます!これからも頑張りますのでよろしくお願い致します! (2018年4月30日 10時) (レス) id: 240d3919d8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まのん | 作成日時:2018年4月23日 15時