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「紫躍…ごめん」
「なに?なんのごめん?」
紫躍の声が冷たかった。
「また変な男にさらわれたんじゃないかって」
紫躍が立ち止まった。
「心配させんなよ。お願いだから。」
紫躍の声が微かに震えていた。
「お願い。A…もうどこにも行かないで。」
紫躍の声が痛いほどに私に響いた。
「A、どこ行ってたの?紫躍くん、一回家までAを探しに帰ってきたのよ。Aがいないってわかったらまた学校に走っていったんだからね」
帰ったら玄関でお母さんに叱られた。
「紫躍くんを心配させないで。Aが昔、誘拐されたときに紫躍くんがAを見つけてくれたのよ。忘れたの?紫躍くんは一晩中Aを探してくれて」
お母さんが泣きそうな顔で私を覗き込む
「まぁ、無事だったんですし…」
「紫躍くん、いつもありがとうね」
「そんな…おばさん、俺たち付き合ってるんです」
「え?そうなの?」
お母さんの顔が明るくなる。
「紫躍くんが彼氏なんて…なんでAは何にも教えてくれないの?そうなの?よかったわねー最近はお友達もできて。きっと紫躍君のお陰ね。今日は紫躍君も夜ご飯食べて行って?何がいいかしら」
お母さんはそう言ってご機嫌にキッチンへと去っていった。
「ねぇ、部屋行こう」
紫躍は私の手を引いて部屋に入る。
そのまま私を抱きしめた。力いっぱいに抱きしめた。
「A…心配させないで。俺の言うこと聞けない?」
私は首を横に振る。
「体育祭のことはもう仕方ない。でも約束して、体育祭終わったらもう永瀬とは関わるな」
思わず首を横に振りそうになったけど、それはできなかった。
「できるよね?約束」
そう言った紫躍を見つめながら首をこくりとした。
「いい子」
そう言って私の頭を撫でるから私は目を瞑った。
いつものように紫躍の唇の感触が伝わった。
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ゆっぴー - 廉くん頑張れ。 (2021年11月21日 13時) (レス) @page42 id: 233a7fa478 (このIDを非表示/違反報告)
ゆっぴー - 廉くんと主人公がハッピーエンドになる事を願います。紫耀は主人公が自分から離れるのが怖いだけでしょ。 (2021年11月21日 13時) (レス) @page42 id: 233a7fa478 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蒼子 | 作成日時:2020年4月24日 21時