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『ご…ごめん、莉犬くん、待っててくれたのに、先帰るね…!ごめんね…!』

あまりにも突然で、こんがらがった頭の中で私は必死に動いた。

職員室に行く前に机に置いておいたカバンを焦りながら掴んで教室を出ようとする。

「ちょ、ちょっと待って!A!」

『__ッ、』

大声を出して手を掴まれて振り返った私の顔を見た彼は、はっとして眉をひそめた。

「…あ…A…おれ、おれは」

『(あれ…私、泣いてる)』

手を掴む力が少しだけ緩んだ。

私はまだ混乱していて、掴まれたその手を腕を振って振りほどいてしまった。

その勢いで自分の手が力強く机に当たって、鈍い音が教室に響く。

泣いて痺れて感覚が曖昧でもヒリヒリと痛む手をもう片方の手でそっと握る。

『う、うん大丈夫…大丈夫だから、帰るね。また…明日…』
テンポの悪い息を唾で飲み込んで私は言葉を発した。

三歩ほど、後ろ向きに下がってからくるっと向きを変えて扉をくぐる。
そして踏んだ廊下の床を蹴り出して、行きよりも早く走ったのだ。

『(やだ、やだ…違うよね、


___莉犬くん…)』

誰もいない廊下にバタバタと響く足音。
考え事のせいで周りが見えなくなっていて、曲がり角で誰かに思いっきりぶつかってしまった。

『__ッ、ごめんな…さい…っ』

走ってだらしなく乱れた息と髪を整えながら、まだ止まらない涙をふいて喋った。

「だ、大丈夫です、怪我は…あれ、A?莉犬と帰ったんじゃ…
____ッ!?どうしたのそんなに泣いて…!!」

尻もちを着いた私の頭上から降ってきた声は、聞き覚えがある安心する声で
私の状態を見て、はっとしたのかすぐに自分もしゃがみこんで私の手を握った。

『るぅ、と__くん…わたし、私…』
「大丈夫、大丈夫だから息吸って?
無理に話そうとしないの、」

五分くらい経った頃、私の息は多少の乱れはあったが随分落ち着いてきた。

その間、るぅとくんは震えた手をずっと握っていてくれたのだ。

「ゆっくり、話せそうだったら僕に___」
その時だった。

___「ッ、は、A!!」

『…莉犬、くん』

息を切らして走ってきた莉犬くんの姿があった。
女の子の姿はなく、一人でそこに立っていた。

「莉犬…!Aが泣いてて、一緒に保健室まで___」
『来ないで、!!!』

__「ちょっと莉犬〜!置いてかないでよ〜!」

いきなり張り上げた声と後ろから走ってきた女の子を見て、るぅとくんは理解が出来ずに戸惑っているようだった。

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設定タグ:るぅと , 莉犬 , すとぷり   
作品ジャンル:恋愛
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しのぶ - 初コメです!凄く面白そうで、このあとの展開が楽しみです!頑張ってください! (2023年1月8日 22時) (レス) @page16 id: 0ed4fa3946 (このIDを非表示/違反報告)
ジャイ子の友達 - 初こめです面白いですね!更新がんばってください!! (2022年6月18日 11時) (レス) @page16 id: aa2b55b842 (このIDを非表示/違反報告)
ぴーち - この話好きです (2022年5月27日 22時) (レス) @page16 id: 2e0541f151 (このIDを非表示/違反報告)
莉ru(プロフ) - 銀魂見ます!絶対面白い! (2021年6月21日 21時) (レス) id: edb58a9a7f (このIDを非表示/違反報告)
みるり(プロフ) - キュンキュンしますねぇ。いつか共同制作してみたいです! (2021年4月28日 6時) (レス) id: 5745da0037 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ne6 | 作成日時:2020年3月19日 1時

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