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放課後
莉犬くんの隣を歩いていた。
夕日の差し込む長い廊下、まるで“あの日”と同じような風景が少しだけ心を痛めた。
「その…ごめん。最悪って、思ってるでしょ…?」
『…』
控えめに彼が言った。
私はそれに答えず、ただ前を向いたまま歩く。
莉犬くんとこうやって歩くのは、いつ以来だろうか。
ずっと好きで好きで一緒にいたのに、ある日突然避ける対象となった彼が今隣にいるこの変な感覚に慣れないのだ。
「話す気にも…なれないよね、えっと俺___」
『ううん、ごめん。ちょっとびっくりしちゃって。』
「…そう、だよね。ごめん。」
開いた窓からもれた風が頬をなでる。
そしてまたしばらく沈黙が続いた。
こんな空気に耐えられなくなったのか、口を開いたのは彼だった。
「あ、あ!えっとクラスの出し物、演劇に決まったね!衣装とか、えっと予算とか…あとはその、か、看板とか…ってうわああああ!?」
まさか何の障害物もない廊下で、転ぶ人なんて。
『わ!?ちょあぶな!?』
ふいに隣にいたはずの人影が、叫び声とともになくなるものだから、私は焦って彼を支える。…が、もちろん男子の体重を私なんかが片腕で支えられる訳もなく、その場に二人一緒に倒れこんでしまった。
バッと身体を起こした彼。一瞬だったが、倒れる寸前に私の頭の後ろに手をまわしてくれたおかげで、痛みはほぼなかった。
「ご、ごめん!!!!俺ちょっと前見えてなかったかも___」
手を左右にブンブン振り回し、目をグルグルさせながら莉犬くんは謝っている。
相変わらずこんなにもどんくさくて、でも守るところはしっかり守ってくれて…
目の前で慌てふためく彼がおかしくって、それでいて懐かしく感じて…
『…ふふ』
「A…?」
『ふふっ、あはは、もう莉犬くん、何もないところで転ばないでよ!びっくりしたよ、もう』
気が付いたら、昔みたいに笑っていた。
そんな私を見て、安心したのか、はたまた嬉しかったのか、一度目を開いてから彼も一緒に笑うのだ。
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いつも読んで下さりありがとうございます。作者のne6です(^^)
何か月も更新なくお待たせしてしまって申し訳なかったです。久しぶりに更新してみると沢山の方に反応していただけて嬉しい限りです!
コメント、とっても励みになります。どうぞ気が乗りましたら少しでも頂けると幸いです。
これからは文化祭編!楽しみにしていてネ!
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しのぶ - 初コメです!凄く面白そうで、このあとの展開が楽しみです!頑張ってください! (2023年1月8日 22時) (レス) @page16 id: 0ed4fa3946 (このIDを非表示/違反報告)
ジャイ子の友達 - 初こめです面白いですね!更新がんばってください!! (2022年6月18日 11時) (レス) @page16 id: aa2b55b842 (このIDを非表示/違反報告)
ぴーち - この話好きです (2022年5月27日 22時) (レス) @page16 id: 2e0541f151 (このIDを非表示/違反報告)
莉ru(プロフ) - 銀魂見ます!絶対面白い! (2021年6月21日 21時) (レス) id: edb58a9a7f (このIDを非表示/違反報告)
みるり(プロフ) - キュンキュンしますねぇ。いつか共同制作してみたいです! (2021年4月28日 6時) (レス) id: 5745da0037 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ne6 | 作成日時:2020年3月19日 1時