番外編 ページ43
サンジがAに対して呼び捨てになった話。
それは、Aが仲間になって、数日後のことだ。
サンジは少し悩んでいた。
Aの扱いについてだ。
仲間になって気づいたことなのだが、
Aは自分を女として扱われるのが嫌いなようでナミにしているのと同じようにサンジがデレデレしながら
「Aちゃん」と、呼ぶと怪訝な顔をして「それ、嫌だ」というのだ。
だが、女に対してはこのような態度を取ってきたサンジは「嫌だ」と言われてもどのような態度を取って良いのか分からなかった。
そこでサンジはこの船の航海士であるナミに相談をしたのだが、
「そんなのゾロとかルフィにしてるときみたいのでいいのよ。」
と人蹴りされるだけであった。
だが、サンジの中のポリシーが女を丁寧に扱うことなので、どうにも男共にするような雑な態度は憚られた。
そんなサンジは今、自分を入れた6人分の昼食を作っている。
ご飯を作りながらもう一度Aの扱いについて思案していたところ、ギィという、扉の音が聞こえた。
音の方向に視線だけ向けると先程、扱いについて考えいた相手、Aが
「お腹すいた〜………。今日のごはんなにぃ〜？？」
と言いながら入って来ていた。
そんなAにまだ、結論は出ていないのにと一人焦っていたサンジは咄嗟に
「Aか！今日はシチューだ。」
と雑でも無く、かと言っていつもレディーにするような丁寧さの無い中途半端な返事をしてしまった。
「しまった〜……」と一人落ち込むサンジはAの表情を恐る恐る見る。
するとそこには今までには考えられないくらい嬉しそうな顔で口元を緩めるAがいた。
そんなサンジは感じたことのないほどの胸の痛みに思わず胸を抑える。
どうやら少し顔も暑いようだ。
サンジはもう一度Aのあの顔見たさに同じ態度をとる。
それにまたもやAは嬉しそうに笑うと「これからもそれがいい。」と言う。
これが、サンジがAを呼び捨てにする理由である。
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作者名：ヴォン | 作成日時：2022年8月15日 9時
