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それから約半年。
船も変わり、新しい仲間としてブルックが入り一段と船が賑やかになった今日。
Aは一人読んでいた本をパタンと静かに閉じ、懐かしい思い出に思いを馳せる。
Aが始めて麦わらの一味の仲間になった日。
そんな、楽しくも悲しい思い出を振り返りながら船首まで行くと見慣れた後ろ姿があった。
決して広くない背で、私たちのピンチを何度も助けてくれた船長、モンキー・Dルフィ。
そんな彼は基本、寂しがり屋な性格で一人でいることは少ない。
Aは一人船首に座り、地平線の先を見る彼にそっと後ろから忍び寄り声をかける。
A「ルフィ、私もそこに座りたい。」
その声にはじめからAが居るのを気づいていたのか対して驚くこともなく、腕を伸ばし、自分の膝の上に乗せるルフィ。
だが、そんなルフィはさっきから一言を何も言わず、ただ静かに海を眺めている。
Aもルフィを一度視線を向けるとそのまま静かに海を眺める。
二人の間に沈黙が流れるが、少しも気まずくない。
何分経ったか。
Aは懐かしむように頬を緩めてポツリと話しだす。
A「私ね、さっきみんなに出会った頃を思い出してたよ。」
ルフィ「……………。」
ルフィは何も返さないが、視線を海に向けたままAの声に耳を傾ける。
Aは視線を海に向けたまま話しを続ける。
A「辛かったこと、たくさん会ったね。」
ルフィ「……………。」
A「でも、それ以上に楽しかった。」
ルフィ「……………。」
ずっとだんまりして海を見つめるルフィにAは体を反転し、顔をむりやり自分の方に向けるとフワッと花が咲くように笑う。
A「だから、ルフィに伝えたいんだ。
ありがとう、私を仲間にしてくれて。」
そんなAにルフィは目を見開き、ギュッとAを抱きしめる。
ルフィは妙な胸騒ぎがしていた。
何か、大事なものを無くしそうな予感がしたのだ。
いつもなら大して気にすることも無いのだが、なぜだか今日は仲間と話す気にもなれず一人船首の上に座り海を眺めていた。
そんなときに現れたのがAだ。
A「仲間にしてくれてありがとう。」
そう言われて、不安になっていたことが嘘のように吹き飛ぶ。
でも、まだ少し不安なようで、その不安を目の前のAと共有するかのように隙間なく抱きしめる。
それから数週間後、彼の予感は当たり、一味はバラバラ、最愛の兄は死んでしまうのだが、そのことはまだ誰も知らない。
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作者名：ヴォン | 作成日時：2022年8月15日 9時
