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消えた 土方side ページ29

土方side


『今夜、土方さんのお時間を少しだけ私にください』
『お話したいことがあります』


…Aが消えた。昨日の夜。唐突に、何の予告もなく、赤坂Aはその姿を消した。真選組から。俺の前から。何も言わずに居なくなった。Aは言った。俺の時間を少しだけくれと。話したいことがあるのだと、居なくなる少し前に、確かに俺にそう伝えたのだ。悔しさに顔を拗ねたようにむくれさせてから、そうして、清々しそうな笑みを携えて、そう口にしたのだ。俺はその言葉を、その声を、鮮明に覚えている。昨日のことなのだから忘れるはずもない。

…アイツの表情も、声も、忘れるはずがなかった。


それなのに、アイツは居ない。まるで俺の隣で、毎日共に時間を過ごして、下らない事柄で言い合いを繰り広げていたことが幻だったかのように。いつだって隣に居て、ギャアギャアと騒ぎ立てていたソイツがいきなり居なくなったことに、俺は困惑していた。違和感しか抱けなかった。そこにAが居ることが、当然のことだと思い込んでいた。

…昨日まで、昨日の夕暮れ時まで、アイツは居たんだ。俺のすぐ傍に。なのに。


「オイどういうことだ!!」


「…!」


…Aの部屋。今は誰も居ない、資料で散らかった部屋。その場所の前に。アイツと待ち合わせていた場所に、俺は立っていた。昨夜、不自然に開け放たれていた窓は、今は閉められている。が、いつもは厳重に鍵をかけているはずなのに、その鍵は壊されていた。まるでプレスに潰されたような形に変わっている。人間技だとは、思えなかった。

そんな時、真選組屯所の門の辺りで、そんな、怒鳴り声が聞こえた。切羽詰まっているような、必死な声だった。口にくわえていたタバコを携帯灰皿の中に突っ込み、俺は足を進める。その声の人物には、検討がついていた。


…廊下を進み、玄関に出るとそこには総悟の奴もいて。まるで俺を待っていたかのように壁にもたれている。


「…やっぱり、あちらさんにも手掛かりはありやせんでした」

「…そうか」


そんな会話をしながら、俺と総悟は門へと繋がる石畳の上を歩く。程なくして辿り着いたそこには、近藤さんに山崎、そして、万事屋の野郎とガキ共二人が居た。万事屋は近藤さんに掴みかかり、必死に訴えている。


「Aが居なくなったってどういうことだ!!」


説明しやがれ!!と。叫ぶような暴力的なその声は、辺りに空しげに響いていった。

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設定タグ:銀魂 , 土方十四郎 , 真選組、攘夷   
作品ジャンル:アニメ
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- 長編小説って飽きやすいイメージがありますが、ピピコさんの小説は、全く飽きることがなく、むしろ読むたびに続きが読みたい!と思えます!最後までしっかりと読むつもりです! (2019年5月26日 10時) (レス) id: 0b828016c7 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - にんじんさん» にんじんさん!レス遅れてしまいごめんなさい!ありがとうございます!また子ちゃんは多分私の書く小説で出てくるのは初めてだと思われるので上手く書けているか不安でしたがそう言って頂けて安心です…!また子ちゃんだけではなく総督様にもご注目くだされば幸いです! (2018年2月14日 23時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
にんじん - また子ちゃんカワイイ! (2018年2月10日 12時) (レス) id: 5460fa1ff4 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 鏡華さん!ありがとうございます!終わってほしくないと言って頂けて感激してます!書き手としてすごく嬉しいです!ずっと暖めていたお話なので展開をうまく開いていけるか不安ではありますが頑張らせて頂きます!高杉さんにそして土方さんの活躍をお楽しみに! (2018年2月9日 19時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
鏡華 - 終わってほしくないです!!高杉さんも関わってきて、続きが気になります!! (2018年2月9日 9時) (レス) id: a16b684fd7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/  
作成日時:2018年1月27日 18時

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