最悪だね ページ12
…どうやらここは、何処かの屋敷の和室らしい、と。そう理解してきたところで、そんな声が聞こえてきた。その声に、聞き覚えのあるその声に、私は目を見開かせてはガバッ、と勢いよく起き上がる。するとその反動でか首の裏がズキリと痛んだ。そんな痛みが帯びた理由も、今ならもう理解できる。軽く顔を歪ませて首の裏を押さえ、私は口元を歪めて笑って見せた。
…無意識のうちに浮かべた笑みは、戸惑いを隠すためのものだった。
「…どうだ、調子は」
「…最悪だね」
絶好調だと思うの、と。私はそう言いながら、視線を声の主である人物、晋助へと向ける。この部屋の襖はいつの間にか開けられていて、襖に背中を預けるようにして晋助は煙管を蒸かしていた。ふわりと漂う煙が、晋助を一瞬だけ隠して、空気に溶けるように消えていく。時間をかけて、ゆっくりと。消えることを惜しんでいるように。
…目を覚ましたら知らない場所。しかも元彼に連れ去られてここに居るとあれば、いい目覚めとは言えないだろう。奇妙な目覚めすぎる。
「ていうか、音もたてずに女性の寝ている部屋に入らないでよ。どうすんの?寝相が思いの外悪くて着物がはだけていたら」
…なんてことをせめてもの仕返しに言ってやるけれど、晋助がそんなほとんどざれごとのような言葉に耳を貸すなんてことはなく。ただ黙ったまま煙管を口に持っていく。一連の動作が洗礼されていて、思わず見惚れてしまいそうになる。そういう雰囲気を、彼は漂わせていた。どんな動きをしていても、周りの目を奪ってしまうような。
いつの間に晋助はここに居たのだろう。まったく気がつかなかった。実はちょっとビックリしていたりする。悔しいから口には出さないけれど。
「…んで、これはどういう状況なのか、説明して貰えたりするのかな」
…ぐるりと辺りを見渡してみる。質のいい畳にふかふかの布団が敷かれていて、私は今までここでぐっすりと眠っていた訳だ。窓なんてものはなく人工的な明かりだけがこの部屋を照らしている。それでも何処か、暗い空間だった。今は何時なのだろうと時計を探すけれど、どこにもその類いが見当たらない。
「…どういう状況だと思う」
…と。晋助は面白そうに笑みを浮かべながら、私にそう問い掛けた。質問に質問で返さないで頂きたかったけれど、反論するのも面倒なので少しの間考えるような素振りを見せては、私は答える。
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狗 - 長編小説って飽きやすいイメージがありますが、ピピコさんの小説は、全く飽きることがなく、むしろ読むたびに続きが読みたい!と思えます!最後までしっかりと読むつもりです! (2019年5月26日 10時) (レス) id: 0b828016c7 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - にんじんさん» にんじんさん!レス遅れてしまいごめんなさい!ありがとうございます!また子ちゃんは多分私の書く小説で出てくるのは初めてだと思われるので上手く書けているか不安でしたがそう言って頂けて安心です…!また子ちゃんだけではなく総督様にもご注目くだされば幸いです! (2018年2月14日 23時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
にんじん - また子ちゃんカワイイ! (2018年2月10日 12時) (レス) id: 5460fa1ff4 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 鏡華さん!ありがとうございます!終わってほしくないと言って頂けて感激してます!書き手としてすごく嬉しいです!ずっと暖めていたお話なので展開をうまく開いていけるか不安ではありますが頑張らせて頂きます!高杉さんにそして土方さんの活躍をお楽しみに! (2018年2月9日 19時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
鏡華 - 終わってほしくないです!!高杉さんも関わってきて、続きが気になります!! (2018年2月9日 9時) (レス) id: a16b684fd7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2018年1月27日 18時